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建設機械の未来を創る―コマツ 開発本部の挑戦

建設機械の未来を創る―コマツ 開発本部の挑戦

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◆長川 研太(オサガワ ケンタ)

コマツ 開発本部 フィールドオートメーション開発センタ

AHS管制システム開発グループ グループマネージャ

◆小松 健浩(コマツ タケヒロ)

コマツ 開発本部 ICTシステム開発センタ 副所長

■服部 堅二

㈱メイテックネクスト コマツ社営業担当


建設機械業界のリーディングカンパニーとして、世界中で高い評価を受けるコマツ。

「挑戦する」「共に創る」「やり抜く」「誠実に取り組む」というアイデンティティのもと、インフラ整備や鉱山開発の現場を支えています。

 

同社の開発本部は、未来の建設機械を生み出す中核拠点。エンジニアたちは日々、新たな技術開発に挑戦し、次世代のものづくりを支えています。

 

今回は、開発本部の小松さんと長川さんにインタビューを致しました。

最前線で活躍するお二人に、コマツでの業務内容ややりがい、そして技術革新を支える開発本部の魅力について語っていただきました。

未来を切り拓くエンジニアたちのリアルな声をお届けします。

建設機械業界の最前線を担うエンジニアの道

建設機械業界の最前線を担うエンジニアの道

――現在に至るまでのご経歴について教えてください。

 

小松氏:

大学と大学院で油圧制御を専攻しており、もともと建設機械の分野に関心がありました。

油圧技術を活かせる仕事を探す中で、建設機械の分野に魅力を感じ、コマツへの入社を決めました。

 

入社後は、まずトンネル掘削機械の部署に配属されました。

そのあと、ロボット開発や半導体製造装置の開発など、さまざまな分野での経験を積み、現在は建設機械のソフト開発部門のマネージャーを担当しています。

 

海外出張の経験もあり、アメリカやヨーロッパへの出張を通じて、さまざまな価値観や働き方に触れられたことは貴重な経験になりました。

 

また、自ら提案し、裁量の範囲内で実際に行動できる環境の中で仕事をする事が出来ていると感じています。

 

長川氏:

2004年から2009年まで、車載用機器のメーカーに勤務していました。

 

しかし、2008年のリーマン・ショックの影響で経営状況が悪化し、将来への投資が大幅に縮小されました。

そこでより将来性のある企業で働きたいと考え、転職を決意しました。

 

当時、コマツも採用をかなり絞っていましたが、唯一募集していたのが「無人ダンプトラック運行システム(AHS)」のプロジェクトでした。

 

前職でのソフトウェア開発経験や、大学時代に学んだ機械制御の知識が活かせると考え、コマツへ入社。2009年の入社以来、AHSの管制システム開発に携わっています。

 

AHSがまだ商用化されて間もない2009年当時、世界で稼働していたダンプトラックは十数台しかありませんでした。しかし現在では、世界で700台以上が稼働するまでに成長しています。

 

自分が関わってきたプロジェクトが、会社の重要なビジネスへと成長していく過程を目の当たりにできたことは、とても印象深い経験です。

デジタル化・電動化がもたらす建設機械の未来

デジタル化・電動化がもたらす建設機械の未来

――今後の貴社の技術展望や、業界の技術・トレンドについて教えてください。

 

小松氏:

当社は、「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」を目指しています。

 

これを支えるデジタル化には、「建設機械自体がデジタル情報を外部に発信すること」と「電子制御を活用すること」の二つの側面があります。

私たちは、双方の領域におけるデジタル化の推進と、より高度な技術の開発に力を入れています。

 

また、近年注目されているSDV(Software Defined Vehicle)の流れは、建設機械業界にも影響を与えると考えています。

例えば、自動車業界で進む自動運転技術やユーザーエクスペリエンスの向上は、建設機械にも求められています。それに伴い、ソフトウェア技術の重要性もますます高まると感じています。

 

また、建設現場や土木の現場のオペレーターにとっての使いやすさだけでなく、人手不足の解消や安全性の向上の観点においても重要な要素となります。

AIの活用も今後ますます重要な課題となるでしょう。

この分野の技術は日々進化しているため、最新情報を常にキャッチアップしながら、どのように活かせるのかを考え続けることが重要だと考えています。

 

長川氏:

フィールドオートメーション開発センタとしては、鉱山全体の自動化・遠隔化を進めたいと考えています。

現在はダンプトラックの無人化が最も進んでいますが、ショベルやブルドーザーといったほかの鉱山機械の自動化も進める必要があります。

 

制御技術、位置計測、通信技術など、多くの要素技術が求められるため、ソフトウェアの重要性は今後さらに高まると考えています。

 

コマツとしては、短期的な課題」と「長期的な課題」の二つに直面しています。

 

短期的な課題は、顧客ニーズにスピーディーに答えることです。AHSの導入が急速に拡大する中、お客さまから「このオペレーションを実現したい」「この部分の生産性を向上させたい」といった要望が次々に寄せられています。

これらの要望に対応し、事業成長を支える人材の確保が必要となっています。

 

長期的な課題は、ダンプトラック以外の機械の自動化・遠隔化に向けた技術開発です。

例えば、ショベルの自動化を実現するには「どこをどのように掘れば最も効率が良いのか」を判断する技術が必要です。掘削作業には高度な判断が求められるため、それに伴い技術開発の重要性も増していきます。

エンジンから電気・電子システムまで、トータル開発の強み

エンジンから電気・電子システムまで、トータル開発の強み

――他社と比較した際、貴社の技術にはどのような強みがありますか?

 

小松氏:

当社の強みは、エンジン、トランスミッション、油圧機器、電気・電子システムなどのコンポーネントをすべて自社で開発している点です。

 

各コンポーネントの限界を理解したうえで、どのような操作が可能か、どのようにチューニングすれば最適な性能を発揮できるかを検討しています。

 

例えば、燃費向上のための調整を行ったり、操作性を高めるためのフィードバックを細かく反映したりと、細部に亘る最適化を自分たちの手で行える点が大きな強みです。

 

長川氏:

当社の最大の強みは、「お客さまのオペレーションへの深い理解」にあると思います。

 

AHSは2008年に商用化されましたが、それ以来15年以上にわたり、お客さまと密に連携しながらシステムを継続的に改善してきました。

 

お客さまの実際の運用方法を深く理解し、時には「こういう機能が必要ではないか?」と技術者側からも提案する形でシステム開発を進めています。

 

お客さまの課題を的確に把握し、それに最適なソリューションを提供できる。その積み重ねこそが、コマツの強みです。

多様な機械を制御する挑戦と成長を実感できる環境

多様な機械を制御する挑戦と成長を実感できる環境

――異業界(自動車業界など)から建設機械業界に転職する面白さや、やりがいについて教えてください。

 

小松氏:

油圧ショベルやホイールローダー、ダンプトラックなど、多様な機械を自分の開発したソフトウェアでセンシングし、制御し、実際に動かすと同時にさまざまな情報を発信できるという実感を得られるのは、建設機械業界ならではの醍醐味だと思います。

 

また、今後建設機械の電動化はますます進むと考えられます。そのため、この分野に早い段階から挑戦できるのも大きな魅力です。

 

自動車業界ではSDV(Software Defined Vehicle)化が急速に進んでいますが、建設機械業界も同様に進化し続けています。

技術者として新たな挑戦ができる場が多く、これから成長が期待される分野にコミットできることが、やりがいにつながるのではないかと思います。

 

長川氏:

「下流から上流まで開発全体を見られること」「個人の責任範囲が広いこと」、そして何よりも「自分が開発したものがすぐにお客さまのもとで使われ、その結果が見えること」が大きな魅力です。

 

例えば、新しい機能を開発してリリースすると、数か月後には実際にお客さまがその機能を使用してくれます。

稼働データがすべてサーバーに集まってくるため、自分が開発した機能をお客さまがどのように使ってくれているか確認することができ、お客さまから「この機能は便利だ」「ここを改善してほしい」といったフィードバックを直接もらえることもあります。

 

こうした開発サイクルの中で、自分の技術がすぐに現場で活かされる実感を得られるのは、ほかの業界ではなかなか味わえない魅力だと思います。

環境規制と技術革新が左右する建設機械の進化

環境規制と技術革新が左右する建設機械の進化

――開発期間やモデルチェンジの頻度について教えてください。

 

小松氏:

モデルチェンジの周期は、中型・小型機の場合は数年ごと、大型機の場合はさらに長い傾向にあります。

 

モデルチェンジのきっかけは、新機能織り込みや既存機能の性能UPによる差別化、コスト低減、排ガス規制等の環境規制など、さまざまです。

 

排ガス規制に関しては今後一層厳しくなると予想されるため、そういった意味でも電動化モデルの開発が重要になってきます。

 

長川氏:

フィールドオートメーション開発センタでは、常に新しい開発を進めており、バージョンのリリースは毎年行っています。

 

新しいバージョンには、お客さまからの要望をもとに優先度の高い機能を選定し、追加しています。

このように開発とリリースのサイクルを繰り返しながら、システムを進化させていくイメージです。

徹底した品質管理とカスタマーファースト、効率的な働き方の融合

徹底した品質管理とカスタマーファースト、効率的な働き方の融合

――貴社のカルチャーや風土の特徴について、働き方も含めてお聞かせください。

 

小松氏:

やはり「きちっとした会社」という言葉が、コマツのカルチャーを最もよく表していると思います。

 

「SLQDC」(Safety:安全、Law:法令順守、Quality:品質、Delivery:納期、Cost:コスト)という優先順位の考え方が社内に浸透しており、全社員に根付いていると感じます。

 

中でも品質と信頼性の追求はコマツのものづくりの基本です。

例えば、品質目標を設定したら、とにかくそれを達成するために徹底的に作り込むという文化があります。

近年、アジャイル開発が導入される場面も増えていますが、一方で「ここまでの品質は絶対に守る」という意識が強く根付いているのも特徴です。

 

日々の開発を進める一方で、世の中の最新動向にアンテナをはり、ロードマップを意識しながら将来のやるべきことにも目を向けています。

 

長川氏:

特徴の一つは現場・現物を重視する文化です。

 

ただ机上でソフトウェアを書くのではなく、実際に試験場でテストを行ったり、お客さまの現場に足を運んだりする機会が多いのが特徴です。

「カスタマーファースト」の精神は、全員が共有している価値観だと思いますね。

 

働き方に関しては、仕事中は真剣に取り組み、無駄な長時間労働をしない風土が根付いています。

そのため、仕事はしっかりやり、プライベートも充実している人が多い印象です。

 

また、20代・30代のメンバーが半数以上を占めており、若手が活躍しやすい環境が整っています。

開発現場に根付く理念

開発現場に根付く理念

――貴社の経営理念についてはどのようにお考えですか。

 

小松氏:

改めて経営理念を見ると、「やり抜く」「挑戦する」「誠実に取り組む」 という考え方は、結局のところ普段から自然と実践していることに気が付きます。

要するにコマツの社員に社風として染み込んでいるのでしょうね。


例えば、新しい技術を積極的に取り入れることや、他部門と協力しながら開発を進めることなど、そういった姿勢は当たり前になっていると感じます。

 

長川氏:

基本的な考え方として、「お客さまとともに価値を創り出していく」という意識が強くあると思います。

 

ほかの会社では、企画部門が決めた機能を開発者がそのまま実装する、という形の開発が一般的かもしれません。

しかし、コマツでは開発者自身が積極的にお客さまと関わり、「お客さまが何に困っているのか」「何を求めているのか」を深く理解し、新たな価値を提供できるような開発を行っています。


そのため、経営理念は意識するかどうかにかかわらず、開発者一人ひとりの行動に自然と浸透しており、コマツ全体の文化として根付いていると感じます。

チャレンジ精神と技術力が鍵、無人化開発の最前線へ

チャレンジ精神と技術力が鍵、無人化開発の最前線へ

――今回のポジションについてですが、具体的にどのような人を求めていますか。


小松氏:

ICTシステム開発センタに適しているのは、「建設機械が好きな人」 であるのは言うまでもありません。

 

その上で、組み込みシステムに興味があることも重要です。 対象がコントローラーのハードウェアであっても、ソフトウェアであっても問題ありません。

 

さらに、シミュレーションに関する知識があると望ましいですね。

制御の世界ではシミュレーションを活用したMBD開発が以前から取り組まれていますが、そのほかの分野でも、例えば「電気回路の影響でノイズが発生する」といった現象を数式で解析・予測するスキルは、今後ますます重要になると思います。

 

とにかく、建設機械に興味を持っていて、技術的にソフトウェアの知識がある人、さらに情報化、あるいはメカトロニクスに関する知識を持っている人は大歓迎です。

長川氏:

技術的な面では、自動化・遠隔化のキーになるのはやはりソフトウェアですので、まずは「ソフトウェア開発」のスキルを持った人が必要です。

その上で、制御技術や位置計測技術の知識があれば新しい技術開発にもチャレンジしやすいので、プラスアルファとして高く評価されます。

 

パーソナリティの面では、「チャレンジ精神」があることが重要です。


自動化・遠隔化を進めていく上では難しい技術に挑戦することも多く、海外での試験や海外の技術者とのコミュニケーションも必要になります。

 

そのため、新しいことに積極的に取り組める方や、チャレンジングな環境を楽しめる方が適していると思います。

オンボーディングと実践型OJTで、即戦力としてのスキルを磨く

オンボーディングと実践型OJTで、即戦力としてのスキルを磨く

――入社後のキャリア形成についてお聞かせください。

 

小松氏:

オンボーディングプランを策定し、進捗を「見える化」する取り組みを進めています。

そのため、入社直後から幅広い業務を経験してもらうようにしています。

 

中途採用の方の場合、すでに一定の経験をお持ちだと思うので、コマツの建設機械特有の仕様や制御ソフトに慣れてもらうことを重視しています。

また、新入社員向けの研修プログラムを中途採用の方にも受けてもらい、建設機械の操作体験や資格取得も含めて、体系的に学べる環境を整えています。

 

長川氏:

比較的若いメンバーが多いため、入社1年目から責任ある業務を任せるようにしています。

 

具体的には、入社後早い段階で担当する機能を割り当て、先輩とペアを組みながら開発を進めてもらいます。

その中で、OJT形式で実践的なスキルを磨いてもらう仕組みです。

 

コマツ全体としての教育プログラムも複数ありますが、私たちの部門では、実際の開発業務を通じた経験の蓄積を重視しています。

自分の開発が現場を動かす—チームで築く建設機械の未来

自分の開発が現場を動かす—チームで築く建設機械の未来

――最後に、この記事を読んでいるエンジニアの方々に向けて、メッセージをお願いします。

 

小松氏:

私たちはソフトウェア開発をメインに取り組んでいますが、それは決して一人で完結する仕事ではなく、チームで協力して進めるものです。

 

メンバー同士でコミュニケーションを取りながら、あるいは車体開発センタなどの他部門と連携しながら、一つの建設機械を作り上げていく。

そして、完成したときの達成感をみんなで共有する。このサイクルをとても大切にしています。


ぜひ、建設機械の未来を一緒に創っていきましょう!

 

 長川氏:

コマツで働く面白さは、自動化・遠隔化をはじめとする高度な技術を商品化し、それをさらに発展させていくことにあると思います。

 

また、自分が開発したものがすぐに実際の現場で使われ、フィードバックを受けながら次の開発に繋げていけるのも、大きな魅力です。

 

私自身、開発者だった頃は「自分の作った機能が実際に動いている」と実感できることが、大きなやりがいでした。

 

ぜひこの環境で、エンジニアとしての面白さや達成感を感じてもらえたらと思います!

この記事の寄稿者

今回は、建設機械業界のリーディングカンパニーとして、世界中で高い評価を受けるコマツ社にお伺いさせて頂きました。

小松様と長川様のお話をお伺いし、ソフトウェアの人材が”今建機業界に参画する意味”やソフトウェア人材の重要性を聞くことができました。

また、同社の品質へのこだわりやカスタマーファーストで寄り添う姿勢は素晴らしいと思いました。

自分が開発した機能をお客様がどのように使っているかを確認することができ、直接フィードバックをもらえるという環境もエンジニアにとっては素晴らしい環境だと感じました。

記事では記載ができませんでしたが、同社の魅力をお二方から詳細に伺っておりますので、少しでも同社へのご興味がございましたら、お気軽にお問合せ下さい!

岩崎 貴代恵
岩崎 貴代恵

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