
異業界出身者も活躍できる。技術革新と安全性を追求した制御ソフト開発の最前線
株式会社デンソーは、1949年の設立以来、グローバル自動車部品メーカーとして先進的な自動車技術や製品などを生み出し続けています。なかでもソフトウェア技術3部は、車両の制御を担うECU(電子制御ユニット)の開発を手がけ、走行性能や安全性の向上に貢献しています。
今回は、ソフトウェア技術3部の取り組みやキャリア形成についてお話を伺いました。
画像左から:
◾️メイテックネクスト 名古屋支社長:平澤岳彦(ひらさわ たけひこ)※取材時
◾️ソフトウェア技術3部 部長:古澤憲三(ふるさわ けんぞう)氏
◾️ソフトウェア技術3部 第1設計室 室長:田中志尚(たなか ゆきひさ)氏
◾️ソフトウェア技術3部 第1設計室 担当次長:佐藤正宏(さとう まさひろ)氏
技術革新への取り組み:パワートレイン制御の未来を切り拓くソフトウェア開発

――ソフトウェア技術3部の取り組みについて教えてください。
古澤氏:
我々は、エンジンECUやハイブリッドECUなどのパワートレイン制御ECUに加え、エアコン制御ECUの開発を主に担当しています。
ガソリン・ディーゼル・水素などの内燃機関に加えBEV・HEV・PHEVといった電動化など多様なパワートレインに対応できる製品ラインアップを整えています。
排ガス規制をクリアするため、いわゆるEFI(Electronic Fuel Injection)を開発し始めたのが1980年代です。
我々の部署はEFIの導入当時から50年近くECUとソフトウェアの開発に携わってきていますので、弊社におけるソフトウェア担当部署の老舗といっても過言ではないと思います。
そのような古い歴史の中で、色々な失敗もしてきたと思いますが、そのたびに改善を加え、よりロバスト性の高い開発をしてきました。
我々はそういった技術を有する車載ソフトウェアのプロフェッショナル集団としてモビリティ社会を牽引していきたいと考えています。
EVへの急速なシフトの一方で、バッテリーのリサイクルや環境負荷といった課題も残っています。
欧州では内燃機関の開発を再開する動きもあり、弊社では今後どの技術が主流になっても対応できるよう、体制を整え、パワートレイン全般に対応したソフトウェアの開発を続けていきます。
田中氏:
SDV(Software Defined Vehicle)の発展に伴い、車両自体の制御にとどまらず、インフラや他の車両との協調を考慮したソフトウェア開発も求められています。
例えば、パワートレインもSDVの概念を取り入れることで、より高度なシステムとしての最適化が可能になります。
パワートレイン向けソフトウェア開発を進める中で、SDVの考え方を組み込み、全体最適を図るアプローチを強化しています。
命を預かる制御技術:高精度・高品質を追求するソフトウェア開発

――開発を行う上で特に重視している点はありますか?
古澤氏:
パワートレイン制御ECUは、クルマの「走る・曲がる・止まる」に直結する重要な領域であり、安全性確保が最優先です。
品質はもちろん、マイクロ秒単位の高精度かつリアルタイムな制御により、システム全体を最適にコントロールすることを目指しています。
佐藤氏:
当部では、「不具合を絶対に起こさない」ことを徹底し、安全を担保する品質にこだわった製品開発を行っているという自負があります。
エンジンやパワートレイン制御に問題が発生すると、車両の安全性に直結し、人命に関わるリスクが生じるため、非常に高い品質基準を維持しなければなりません。
そのため、厳格な品質管理のもと開発を行い、世界的に見ても非常に高い水準の製品を提供できていると考えています。
挑戦を楽しむエンジニアへ:ソフトウェア人財のキャリア形成を支援する独自プログラム

――入社することでどのようなキャリアを形成できるのかお聞かせください。
古澤氏:
弊社では、自動運転やコックピット関連などの大規模開発から、センサーやアクチュエータなど機電一体型の単機能ECUを扱う小規模開発まで、幅広い領域をカバーしています。
大規模開発では数百人規模のチームで分業が進んでおり、上流設計、モノづくり、全体管理など、それぞれの強みを生かしたキャリアを築ける環境です。
一方、小規模開発では少人数で設計から実装、評価まで一貫して担当し、プロジェクト全体を俯瞰する力が身につきます。
我々はその中間にあたる中規模開発の部署で、車両の心臓部ともいえるECUの開発を担っています。
ロバスト性を重視した安心・安全な製品づくりを通じて、車載ソフトウェアのプロフェッショナルとして成長できる環境です。
こうした開発を支えるうえで、要素技術の探索や先行開発も重要な役割を担っており、特定領域のスペシャリストとしてキャリアを築くことも可能です。
また、多様化するパワートレインに対応し、幅広い製品開発ができる点も特長です。
経験の幅を広げることも、特定分野を深めることもできる環境があり、キャリア形成を支援するCIP(キャリアイノベーションプログラム)の仕組みも整備されています。
――CIP(キャリアイノベーションプログラム)について教えてください。
佐藤氏:
ソフトウェア人財のキャリア形成を支援する「CIP(キャリアイノベーションプログラム)」では、役割や能力の定義、認定制度、リカレントプログラム、アサインプロセス、バディ制度、コミュニティ運営など、さまざまな取り組みや企画を実施しています。
CIPには、スキルを7段階で評価する「ソムリエ(SOMRIE™) 認定制度」があり、技術力や管理能力などに応じて、現在のレベルと1年後の目標を設定します。
これにより、従来の社内評価に加え、スキルの客観的な可視化が可能となっています。
田中氏:
ソフトウェア人財といっても専門分野は多岐にわたるため、 SOMRIE™ 認定制度を活用してスキルの見える化を進めています。
高いスキルを持つ人財として認定されることで、同じレベルの仲間と出会える交流会も開催しています。
互いに刺激を受け合える場となっており、そうしたつながりが生まれることも、この制度の大きな魅力だと感じています。
古澤氏:
SDV化の流れもあり、ソフトウェア人財の確保や技術力向上は、デンソーだけでなくモビリティ業界全体で求められています。
デンソーの人財育成制度は、大学や経済産業省も認定する1つのプログラムとして、モビリティ業界全体に浸透させることを目指しています。
将来的には、日本全体のソフトウェア人財の増加やキャリアアップの促進につながるよう、取り組みを進めています。
「〇〇をやったことがある」といった断片的な経験ではなく、制御ソフトウェア技術者としての基礎を高いレベルで積み、自分の強みをさらに伸ばせる育成システムが魅力です。
また、自分がその製品の第一人者だと自負できるようなキャリアも目指せます。
自動車の「動く」を支えながら、カーボンニュートラルやEVといった社会の変化にも貢献できる実感があります。
技術者としての探究心とキャリア成長を両立できる、バランスの取れた環境だと感じています。
さらに、デンソーにはシステム全体を社内で完結できる高い技術力があり、新しいテーマの相談がまずデンソーに来るという信頼があります。
これにより、世界初への挑戦など、大規模かつ最先端の開発にも関われる面白さがあります。
即戦力と成長意欲を歓迎:ソフトウェア技術3部が求めるエンジニア像

――ソフトウェア技術3部で積極的に採用していきたいエンジニアはどのような技術を持っている人ですか?
田中氏:
制御コントローラの基盤ソフト(ダイアグやセキュリティ)や、電動パワートレイン(BEV・HEV・PHEV)向けの制御ソフトに関する技術をお持ちの方を歓迎しています。
最近では、法規制や規格への対応が求められ、特にセキュリティや機能安全の知識が重要視されています。
これらの経験がある方は即戦力としてご活躍いただけます。
また、通信、BSW、マイコン設計のいずれかに加え、プロジェクトマネジメントの経験がある方、あるいは挑戦したい方にもご活躍いただけると考えています。
マネジメント講習も整っており、入社後のスキル習得も可能です。
古澤氏:
特に、日程管理やお客様との調整といったプロジェクトマネジメントができる方であれば、車載ソフトウェアの経験がなくても即戦力になり得ます。
プロジェクトを円滑に進める力は、技術力と同じくらい重要ですので、そうしたスキルをお持ちの方にぜひ参画いただきたいと考えています。
また、我々が担当している制御ECUは長年培ってきた土台があるため、知見やノウハウが部内に蓄積されています。
よって、自動車の知見がない異業界の方でも車載ソフトウェア開発のイロハを学ぶ環境が整っています。
新規性の高い製品のサイクルは2~3年ですが、
機種展開や、マイナーチェンジへの対応は2~3か月とサイクルが短く、達成感を得られやすいです。
我々の部署で自動車のベーシックな制御ECUのソフトウェア開発を身に着け、社内で他製品を担当する部へ異動することも可能です。
活躍するエンジニアに共通する資質

――ソフトウェア技術3部では、実際にどのような志向性やマインドを持っている方が活躍していますか?
古澤氏:
我々の製品は一人で作るものではなく、チームで協力しながら開発するものです。
そのため、チーム一丸となって仕事に取り組める方が活躍しています。
また、チームが何かを達成したときに、その達成感を仲間と共有できる方や、オープンなマインドを持っている方は、組織にとって欠かせない存在です。
エンジニアとしては、新しいことに挑戦する姿勢を持っていることが重要です。前例踏襲ではなく仕事のやり方を柔軟に変えられる力を持っている方は、組織の変革に貢献できるだけでなく、自身の成長にもつながると考えています。
田中氏:
疑問を持ち、それを解消しようとする姿勢を持っている方も重要な人財だと考えています。
決められたやり方にただ従うだけではなく、疑問を追求し、その原因を探ることができる方は、組織の次の成長を支える存在になれるでしょう。
現状に満足せず、常により良い方法を模索することが、技術革新につながると考えています。
エンジニアに向けてのメッセージ

――エンジニアに向けてのメッセージをお願いします。
古澤氏:
どのような製品を担当するにしても、新しいことにチャレンジする精神は欠かせません。
失敗を恐れず、挑戦を重ねることで、物事を変えていく力が生まれます。
そのような前向きなマインドセットを持っている方を、私たちは大歓迎します。
ともにSDVを創り上げ、未来のモビリティを支える技術を発展させていきましょう。
この記事の寄稿者
今回は、グローバル自動車部品メーカーとして、先進的な自動車技術や製品を生み出し続けているデンソー様にお伺いさせて頂きました。
日本の自動車業界を支える重要な役割を担う同社。ソフトウェア人材の育成に向けた独自プログラムなど、エンジニアのキャリア形成にも配慮した環境は、成長したいエンジニアを会社全体で後押しする姿勢は素晴らしいと感じました。私も、実際に皆様のお話を聞き、品質を担保するために、マイクロ秒単位での高精度かつリアルタイムな制御を目指して日々開発を行っていると知り、感動しました。
同社の技術力の高さや品質の高さはもちろんのこと、エンジニアの成長できる環境・やりたいことを後押ししてくれる環境が揃っていることを再度認識致しました。他にも今回の記事では記載ができなかった同社の魅力や特徴がございますので、少しでも興味がございましたらお気軽にお問合せ下さい!
- 中森陽太