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CT技術で医療の未来を切り拓く—GEヘルスケア・ジャパンの挑戦

CT技術で医療の未来を切り拓く—GEヘルスケア・ジャパンの挑戦

GEヘルスケア・ジャパンは、1982年の設立以来、MRIやCT、超音波診断装置などの画像診断分野で培ってきた経験と実績をもとに、現在では約190カ国で10億人を超える患者の診断と治療を支えています。

2023年1月にはGEグループから分社し、独立した上場企業として再スタートを切りました。

  

今回は、CTシステムの開発全体をリードするLead System Designerの佐藤 圭輔氏と、イメージクオリティのアルゴリズム開発に携わるSenior Architectの重政 理紗氏にお話を伺いました。

グローバルな体制のもと、より高精度で使いやすいCTを届けるために挑戦を続ける、最前線のお二人。その声を通じて、CT開発の現場とその魅力に迫ります。

 

インタビュイー:

GEヘルスケア・ジャパン株式会社

MICT技術部 CTシステム開発グループ Lead System Designer:佐藤 圭輔 氏 

CT Clinical Applications & Image Quality Senior Architect:重政 理紗(しげまさ りさ)氏

CT技術の進化を牽引するエンジニアの歩み

CT技術の進化を牽引するエンジニアの歩み

―現在に至るまでのご経歴について教えてください。

 

佐藤氏:

私は大学および大学院で電気電子工学を専攻し、エンジニアとして医療業界に貢献したいという想いから、当時「GE横河メディカルシステム」という社名だったGEヘルスケアに入社しました。入社後はエレクトロニクス技術部に配属され、CT装置における主要構成部品である「ガントリー」や、患者さんが横になる寝台部分の制御基盤設計、電子・電気部品の開発などに携わりました。

 

その後、電気系エンジニアとしての経験を活かしつつ、より広い視野でCTシステム全体の開発に関わりたいという思いから、現在はCTシステムグループに所属しています。

ソフトウェアや機械設計、さらには医療現場での使用状況まで含めた全体像を俯瞰しながら、医療機器の国際標準規格「ISO 13485」に準拠した設計、開発を推進する「リードシステムデザイナー」として業務にあたっています。


重政氏:

私は大学・大学院で生物学を専攻しており、バイオの研究に取り組んでいました。

しかし、研究を通じて得られた成果が、なかなか患者さんや医療現場に直接つながらないもどかしさを感じ、より現場に近い形でアウトプットできる仕事に就きたいと考えるようになりました。

 

医療業界を志すきっかけとなったのは、医療の現場で働く姉の影響です。

中でも医療機器メーカーに強い関心を持ち、グローバルに活躍したいという思いもあって、外資系のGEヘルスケアに2015年に入社しました。

 

入社後は、当時行われていた2年間の技術リーダーシッププログラムに参加し、複数の部署をローテーションする中でCT技術と出会いました。

その中で、イメージクオリティのアルゴリズム開発に取り組むグループに配属され、以降は一貫してアルゴリズム開発に携わっています。

各国の強みを活かすグローバルな開発体制

各国の強みを活かすグローバルな開発体制

―各国の開発体制について教えてください。


佐藤氏:

当社では、地域ごとの市場や経済の成熟度、各国チームの経験などを踏まえ、それぞれの特長を最大限に活かせるよう役割分担を行っています。


例えば、アメリカではハイエンド製品の開発を、中国では大量生産が求められる汎用製品を中心に担当しています。

インドはソフトウェアやセキュリティ分野を中心に取り組んでおり、日本では放射線科医や技師といった顧客との距離が近いことを活かし、ユーザーの声を反映した開発活動を行っています。


特に日本では、ユーザーインターフェースを含む検査ワークフローの改善や、CT画質の向上を通じて顧客の要望に応える取り組みを進めており、普及機セグメントのCT開発においても主導的な役割を担っています。

自社開発と世界規模のサービス体制が支える製品力

自社開発と世界規模のサービス体制が支える製品力

―技術的な強みや、特長にはどのようなものがありますか?


佐藤氏:

CT事業部の最大の強みは、X線管球、高電圧発生器、ディテクターといった主要な構成部品をすべて自社で開発・製造している点にあります。

さらに、ソフトウェアも自社で開発しており、求められる機能やコストに応じて最適なハードウェアとソフトウェアを組み合わせて提供することが可能です。


これにより、製品全体としての総合力を高めることができます。

当社は年間2,500~3,000台のCT装置をグローバルに出荷しており、現在では世界中で約4万台が稼働しています。


これに加え、グローバルに展開しているサービス体制を活かし、各国の規制対応や導入後のアップグレード、サポートを世界中で柔軟に提供できる点も大きな特長です。

CT装置の一般的な寿命は10年以上とされていますが、当社製品は長期間にわたり高い信頼性と安定稼働を実現しています。


このように、技術力、規制対応力、サービス提供力のすべてを兼ね備えることで、当社は競争力のある製品開発を実現しています。


―海外の開発拠点と共同で製品開発を進めることも多いと伺っていますが、今回の部署における海外拠点との関わり方や協力体制について教えてください。


重政氏:

当社では、日本国内だけで完結させるのではなく、海外拠点の開発チームと密に連携しながら製品開発を進めています。

各拠点にはそれぞれの専門性があり、それを活かすことで開発全体の効率化が図っています。


特に、問題が発生した際には、グローバルに整備された社内プロセスを活用して、迅速かつ効果的なコミュニケーションと改善が可能です。

こうした協業体制が、グローバルな製品開発を支える大きな強みとなっています。


―1台のCT装置を開発するまでに、どのくらいの期間がかかるのでしょうか? 開発スパンについて教えてください。


佐藤氏:

CT装置の開発期間は、内容により異なります。

マイナーチェンジであれば約1〜2年ごと大規模なプラットフォーム変更やフルモデルチェンジの場合は、5年前後かかります。

市場のニーズやコスト要件、新機能の追加などが開発のきっかけになります。


業界全体が「追いつけ追い越せ」と競争しているような状況で、特に中国メーカーは開発スピードが速いという印象があります。

私たちもそのスピード感に応えながら、付加価値の高い製品づくりを目指しています。


―現在、医療機器業界では多品種少量・短サイクルでの開発が主流とされていますが、CT事業部ではどうでしょうか?


重政氏:

お客様により良い製品をいち早くお届けすることを目標に、社内プロセスの効率化を積極的に進めています。特に、コア技術以外の領域では外部リソースを活用することで、社内の開発力を重点領域に集中させ、開発スピードを高めています。


また、社外の協力会社やサプライヤーとも密に連携しながら、設計や仕様の調整を進めることで、品質とスピードの両立を図っています。

当社が担うべき領域はしっかりと責任を持ち、パートナーにお願いする部分は信頼して任せるという形で、柔軟な体制を築いています。


こうした取り組みによって、お客様に最適なソリューションをより迅速に提供できるよう努めています。

CT業界の最新トレンド — AI活用で進化する医療現場のワークフロー

CT業界の最新トレンド — AI活用で進化する医療現場のワークフロー

―現在のCT業界における主要なトレンドは何だと考えていますか? また、それに対応するために、どのような技術を取り入れていきたいとお考えでしょうか?


佐藤氏:

現在のCT業界における主要なトレンドは、AIを活用したCT検査全体のワークフロー最適化です。

いわゆる「エフォートレスワークフロー」の実現を目指し、画像診断の効率化と一貫性の向上に取り組んでいます。


具体的には、技師の熟練度によるばらつきを低減し、スキャン範囲の自動設定やポジショニングの最適化を通じて、高品質な画像を安定して提供する技術が求められています。


これに対応する技術として、AIによる画像処理精度の向上や、天井設置型カメラを活用したポジショニングの自動化などが進められています。

こうした取り組みは、当社に限らず業界全体で加速しており、今後さらに重要性が増す分野だと認識しています。


―AIを活用したワークフローの最適化とデータ収集の重要性について教えてください。


重政氏:

AIの活用により、操作性を向上させ、誰でも安定した画質でCTを扱える環境を整えることが可能です。

CTは特定の技師が常に担当するわけではなく、ローテーションや緊急対応の中で幅広いスタッフが使用するため、使いやすさと一貫性が求められます。

 

また、撮影データなどの情報を一元管理・分析するプラットフォームであるIBサイトを活用し、既に市場に導入されたCT装置から豊富なデータを収集することで、AIアルゴリズムの精度向上が可能になります。

契約施設との協力を通じ、臨床現場のニーズを反映しながら製品改良を進めることが、GEヘルスケアの強みとなっています。


AI技術以外にも従来のCT装置でのデータの取り方の概念少し変えた「フォトンカウンティング」という新しい画像の取り方も出てきています。

新しい技術を取り込むことで、取れる画像の種類が増え、よりお客様が見たい画像がみれるようにする開発も行っています。

医療全体を見据えた「本当に使いやすい」CT開発を目指して

医療全体を見据えた「本当に使いやすい」CT開発を目指して

 CT開発の現場に携わる中で、 市場に求められる製品についてどのような考えをお持ちですか?

 

佐藤氏:

CT事業部では、日本市場に限定せず、グローバル展開を前提に製品を開発しています。

また、MRIや超音波、デジタル技術、造影剤など他のモダリティとの連携、中央研究所の基礎技術の研究者などと協力しながらイメージクオリティの向上や新機能の開発を進めています。

 

市場のニーズを理解することが重要であり、臨床現場の声を反映しながら、各チームと連携し、よりユーザーフレンドリーなシステムを構築する必要があります。

CT単体ではなく、医療現場全体を見据えた製品開発が求められていると考えます。

 

重政氏

私はアルゴリズム開発を担当していますが、単に画質を向上させるだけでなく、最終的にお客様にとって使いやすい形で提供できることが重要だと考えています。

 

CT装置で取得された画像は、ワークステーションでの後処理を行い、3D表示や特定部位の抽出など、さまざまな形で活用されます。

したがって、画像の品質だけでなく、その後の処理のしやすさまでを見据えて設計することが求められます。

 

このため、ユーザーインターフェース、アプリケーション開発、後処理システムなど、関係する複数のチームと連携しながら、ワークフロー全体がシームレスにつながるように意識しています。

さらに、お客様からのフィードバックも積極的に取り入れています。

 

市場のニーズを的確に捉えつつ、開発者側の都合ではなく、実際の運用現場にとって「本当に使いやすい」と感じてもらえる製品を生み出すことが、私たちの役割だと考えています。

一人ひとりの挑戦が、より良い世界をつくる。GEヘルスケアのカルチャー

一人ひとりの挑戦が、より良い世界をつくる。GEヘルスケアのカルチャー

―カルチャーや風土にはどのような特徴がありますか?

 

佐藤氏:

CT事業部におけるカルチャーの根底には、GEヘルスケア全体のパーパスである「Creating a world where healthcare has no limits(ヘルスケアの限界の可能性を追求し、より良い世界を実現する)」があります。

社員一人ひとりが問題意識を持ち、常に新しいことにチャレンジし、より良い未来のために行動する姿勢が根づいているのが特徴です。

 

また、プロジェクトを推進する中でリソース不足に直面する場面もありますが、その際にはチームやリーダーが自分たちの担当領域にこだわらず、積極的にサポートし合う文化があります。

チャレンジを前向きに捉え、困難に直面した際にも周囲がしっかり支える体制が整っていることが、CT事業部の風土として挙げられます。

 

重政氏

CT事業部のカルチャーは非常にオープンで、多様な価値観を受け入れる環境が特徴です。

グローバルなメンバーと協働するため、異なる文化的背景や考え方に対して寛容な風土があります。

 

例えば、会議では積極的に発言する人もいれば控えめな人もいますが、誰もが意見を出しやすい雰囲気づくりを大切にしています。

そうして引き出された多様な視点を尊重し、それを製品開発に活かすことで、より良い医療機器を生み出しています。

医療の未来に貢献したい。GEヘルスケアが求めるエンジニア像

医療の未来に貢献したい。GEヘルスケアが求めるエンジニア像

―技術力や志向性など、どのようなエンジニアを求めていらっしゃいますか?

 

佐藤氏:

エンジニアとして医療に貢献したいという思いを持っている方にとって、非常にやりがいのある仕事だと思います。

 

私たちの製品は世界190カ国以上で使用されており、それぞれの国の医療機関に対する規制を理解し、それを製品に反映させていく力が求められます。

現時点でそうした知識がなくても構いませんが、そういった要求にしっかり向き合い、製品に落とし込むことに喜びを感じられる方にぜひ来ていただきたいです。

 

また、グローバルチームとのやり取りも多いため、積極的にコミュニケーションをとる姿勢や、チームの中でリーダーシップを発揮する意欲のある方を歓迎しています。

 

重政氏

必ずしも医療機器の経験がなくても、画像処理技術を持つ方は即戦力として活躍できます。

カメラ技術や一般的な画像解析の経験がある方も大歓迎です。


また、バックグラウンドに関係なく、粘り強く取り組める方や、環境の変化に順応できる柔軟な考え方を持つ方が活躍しています。

ポジティブなマインドセットを持ち、挑戦を楽しめる方にぜひ来ていただきたいです。

それぞれの志向を強みに活躍するエンジニアたち

それぞれの志向を強みに活躍するエンジニアたち

―実際に、どのような志向性や技術を持った方が御社で活躍されているのでしょうか?

 

佐藤氏:

グローバルに仕事をしているので、文化や価値観、働く環境は本当にさまざまです。

例えば、ある海外拠点では金曜日が休みなど、休日も国によってバラバラだったりします。

 

そういった違いも含めてお互いに理解し合い、柔軟な考え方でコミュニケーションができる人が活躍しています。

また、考え方がぶつかることももちろんありますが、「なぜこの人はこう主張するのか」を理解しようとしながら、自分の意見もきちんと伝える。そして最終的には、お客さまのために何が最適かを見極めて判断できる、そんな姿勢を持ったエンジニアが力を発揮しています。

 

重政氏

CT事業部では、技術を深く掘り下げて専門性を高めていくエンジニアと、システム全体を横断的に見渡して調整・統合していけるエンジニアの両方が、それぞれの強みを活かして活躍しています。

 

たとえばアルゴリズム開発のように特定領域を追求することで、安全・安心な機能の実現につながりますが、それだけでは製品全体は成り立ちません。

複数の技術をつなぎ、全体として最適な形にまとめ上げていく視点も不可欠です。


もちろん、こうした役割はきれいに二分できるものではありませんが、自身の志向に応じて専門性を磨きたい方も、広い視野で開発に関わりたい方も、それぞれに活躍の場があると感じています。

医療の未来を創る、挑戦するエンジニアへのメッセージ

医療の未来を創る、挑戦するエンジニアへのメッセージ

―最後に、エンジニアを目指す方やご応募を検討されている方へメッセージをお願いします。

 

佐藤氏:

GEヘルスケアの魅力は、医療現場のニーズに応じて新しい機能を開発し、実際に導入されるプロセスを経験できることです。

業界の変化に合わせて進化し、世界中からのフィードバックを受けながら成長していく。このダイナミックな環境の中で、医療機器を通じて世界の医療を変えていきましょう。

 

重政氏:

チャレンジ精神があり、困難に直面してもめげずに前向きに取り組める方にとって、当社は非常にやりがいのある環境だと思います。

経験の有無に関わらず、考え方や姿勢次第で活躍できる職場ですので、「やってみたい」という想いを持っている方と、ぜひ一緒に働きたいですね。


また、当社にはさまざまなワークスタイルの社員が在籍しており、プライベートと仕事をバランスよく両立している方もいれば、仕事に全力で打ち込んでいる方もいます。

前職の環境にとらわれず、新しい働き方や新たなチャレンジを考えている方にも、ぜひ入社頂ければと思います。

この記事の寄稿者

今回は、GEヘルスケア・ジャパン様にお伺いさせて頂きました。同社のグローバル拠点と協業した開発体制、各拠点の強みを活かしながらの高精度なCT開発についてお話をさせて頂き、より同社について深く理解することができました。グローバル人財として活躍したい方はもちろんですが、医療機器を通じて人々の暮らしを豊かにしたい、病気の早期発見に貢献したいなど、自分に思いがありそのためにチャレンジをできる方は特に同社でいきいきと働けると感じました。本記事では全て記載できませんでしたが、他にも同社について詳細を伺っておりますので、少しでもご興味があればぜひお問合せ下さい!

岩崎 貴代恵
岩崎 貴代恵

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