
品質管理(QC)とは?品質保証(QA)との違いや手法、求められるスキルを紹介
品質管理とは、企業が顧客の期待に応え、高品質な製品やサービスを安定的に提供するための重要な取り組みです。
製造や業務のあらゆる工程で品質を計画・管理・改善していくことは、企業の信頼性向上やコスト削減、競争力強化につながります。
本記事では、品質管理の意味や品質保証(QA)との違い、代表的手法などについて詳しく解説します。
品質管理(QC)とは

品質管理(QC)とは、製品やサービスが顧客の要求する品質基準を安定して満たすように、生産や提供の各工程を計画的に管理し、必要に応じて改善を行う活動のことです。
英語では「Quality Control」と呼ばれ、品質を守るための検査や工程管理、不良品の発生防止、品質改善の取り組みなどが含まれます。
品質管理の基本的な目的は、製品やサービスの品質を一定以上に保ち、顧客に安心して選んでもらえる状態を維持することにあります。
品質管理が必要とされる理由として第一に挙げられるのは、顧客満足度の向上です。
品質が安定していれば、顧客は安心して製品やサービスを利用でき、満足度が高まります。
逆に品質がばらついていたり、不良品が多発したりすると、クレームや返品が増え、顧客の信頼を失ってしまいます。
また、品質管理を徹底することで、不良品や手直し、返品などの無駄なコストを削減できます。
工程の見直しや最適化を進めることで、生産性の向上や効率化も実現できます。
品質管理は企業のブランド価値や社会的信用の維持に大きな役割を果たす点も忘れてはなりません。
高品質な製品やサービスを継続的に提供することは、企業に対する信頼感やブランドイメージの向上につながります。
反対に、品質問題が発生すると、事故や社会的な批判を招き、企業の存続に関わる大きなリスクとなります。
このように、品質管理は企業の競争力を高め、市場での優位性を確保するためにも欠かせない活動です。
そのほか、業務効率の改善や従業員の意識向上も重要なポイントです。
現場の問題点を見つけ出し、チームで解決策を考えることで、従業員の問題解決能力やチームワークの向上が期待できます。
品質保証(QA)との違い

品質管理(QC)と品質保証(QA)は、いずれも製品やサービスの品質向上を目指す活動ですが、その役割や担う範囲には明確な違いがあります。
まず、QCは「作り手視点」の活動であり、主に製造工程において製品が定められた品質基準を満たすように検査や管理、改善を行う役割を担います。
その主な対象は製品が完成するまでの工程であり、出荷時点の品質に責任を持ちます。
具体的には、原材料の受け入れ検査や工程内検査、最終製品の検査など、現場での品質維持・向上のための実務的な活動が中心です。
一方、QAは「買い手視点」の活動です。製品の企画段階から販売後のアフターサービスまで、より広範な業務範囲をカバーします。
QAは製品が市場に出た後も含めて、顧客が安心して製品を利用できるように品質を保証する役割を担います。
品質基準やルールの策定、全体的な品質マネジメントシステムの構築、社内教育、顧客対応、アフターサービス、リコール対応などです。
実務の視点からみると、QCは現場での「実行」を担い、QAは全体戦略の「策定」と「監督」を担います。
QAが設計した品質基準やルールに基づいて、QCが現場で具体的な検査や管理を実施するわけです。
また、QCで得られたデータや現場の課題はQAにフィードバックされ、必要に応じて品質基準やプロセスの見直しが行われます。
つまり、QCとQAは密接に連携しながら、品質向上のための「実行」と「戦略」を分担している関係です。
品質管理の代表的手法

一言で品質管理といっても、その手法はさまざまです。ここからは、一般的に用いられることの多い代表的な手法をいくつか紹介します。
PDCAサイクル
PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、ActまたはAction(改善)の4段階を順に繰り返すことで、業務や品質を継続的に改善していく手法です。
例えば、製造現場では不良品削減のためにPDCAサイクルを回し、営業チームでは売上目標達成のために活動内容を見直すなど、さまざまな現場で活用されています。
まずPlan(計画)は、目標や課題を明確にし、達成に向けた具体的な行動計画を立てる段階です。
ここでは、現状の分析と目標設定、実行手順や担当者、スケジュールなどを具体的に決めます。
次にDo(実行)は、計画で決めた内容を実際に現場で実施する段階です。
実行時には、計画どおりに進んでいるか、問題が発生していないかを意識しながら、必要なデータや結果も記録します。
Check(評価)は、実行した結果を振り返り、計画と実績を比較して目標達成度や問題点を評価・分析する段階です。
ここで原因や改善点を特定し、次のアクションに活かします。
最後にAct(改善)は、評価結果をもとに課題や問題点を改善し、次のサイクルの計画に反映させる段階です。
うまくいった部分は標準化し、うまくいかなかった部分は新たな対策を立てて再度PDCAサイクルを回します。
この4段階を繰り返すことで、現場やチーム単位でも日々の業務改善や品質向上が実現できます。
PDCAサイクルは一度きりで終わるものではありません。
継続的に繰り返すことで徐々に業務や品質が改善されていく「改善のためのループ」である点が重要です。
QC7つ道具
QC7つ道具は、品質管理や問題解決の現場で広く使われている7つの基本的なデータ分析手法です。
これらは主に「問題の見える化」や「原因の特定」、「改善策の立案」に役立ちます。
QC7つ道具は、現場で発生した問題の現状把握から原因分析、対策の効果検証、標準化まで幅広く活用されます。
例えば、パレート図で優先的に取り組むべき問題を抽出し、特性要因図で原因を深掘り、ヒストグラムや散布図でデータの傾向や要因間の関係を分析します。対策実施後は管理図やグラフで効果を検証し、チェックシートで標準化や再発防止策の徹底を図ります。
製造現場では、QCサークル活動で不良低減を目指す際、パレート図で不良原因を分析し、特性要因図で真因を追及、ヒストグラムでばらつきを確認、管理図で改善効果をモニタリングします。
また、サービス業や事務部門ではクレーム内容をパレート図で整理し、チェックシートで対応状況を管理するなど、業種を問わず活用されています。
IE(インダストリアルエンジニアリング)
IEはインダストリアルエンジニアリングの略称で、生産現場や業務プロセスを科学的に分析し、ムダやムラを排除して効率化や品質改善を図る手法です。
その主な目的は、生産性向上やコスト削減、品質の安定化、作業標準化にあります。
QCにおけるIEの役割は、工程設計や作業改善を通じて作業のバラつきを減らし、標準化や最適化によって品質の安定や不良品削減に貢献することです。
例えば、動作や工程を分析して誰でも同じ品質で作業できる仕組みを作り、作業手順やレイアウトを改善することで、効率化と品質向上を同時に実現します。
QCが品質維持・向上を目的にデータ分析で不良の原因を追究・改善する活動である一方、IEは作業や工程の効率化・最適化を目的にムダの排除や標準化を進める活動であり、両者は補完関係にあります。
IEによる工程改善がQC活動の基盤となり、QCのデータがIEの改善をさらに促進するというわけです。
品質管理の現場業務

製品やサービスの品質を守るためには、現場でのきめ細かな品質管理が欠かせません。
特に、工程管理・品質検証・品質改善の3つの業務は、安定した品質を実現し続けるための土台です。
工程管理
工程管理は、標準化と進捗管理を通じて不良や遅延を防ぎ、安定した品質と効率的な生産を実現するための基盤となる活動です。
工程ごとに「人・設備・材料・方法(4M)」を適切に管理し、標準作業を守ることで品質のばらつきを防ぎます。
その際の管理指標となるのは、工程ごとの進捗率や不良率、標準作業時間、稼働率などです。
紙やホワイトボード、ガントチャート、IoTデバイスなどのツールを活用し、現場の状況をリアルタイムで把握・管理します。
品質検証
品質検証とは、完成品や生産途中の中間工程で、製品や部品が設計や規格通りに作られているかをチェックする作業です。
この検証は、製品の外観や機能を確認するだけでなく、工程ごとに品質が維持されているかも監視します。
検査方法には、すべての製品を確認する「全数検査」と、一定のルールで一部を抜き取る「サンプリング検査(抜き取り検査)」があります。全数検査を用いるのは安全性や信頼性が特に求められる製品で、サンプリング検査を用いるのはコストや時間を抑えたい場合です。
品質検証の結果は現場や管理部門にフィードバックされ、問題があれば工程や作業手順の見直し、再発防止策の立案などに活用されます。
こうしたサイクルを通じて、製品の品質向上と安定供給が実現されます。
品質改善
品質改善とは、検証や日常業務で明らかになった課題に対し、データに基づいて原因を分析し、具体的な対策を立案・実施する一連の活動です。
まず現状を正しく把握し、「なぜなぜ分析」やQC7つ道具などの手法で不良やトラブルの根本原因を特定します。
次に、発生原因や流出原因ごとに有効な対策を考え、その上で作業手順の見直しやチェックリストの導入、教育訓練の強化などを実施します。
対策を講じた後に進めるのは、データによる検証と再発防止のための標準化や仕組み化です。
この流れをPDCAサイクルとして継続的に回すことで、品質の安定と向上が図られます。
品質管理に求められるスキル・経験

品質管理職に求められるスキル・経験は、大きく「技術スキル」と「ソフトスキル」に分けられます。
まず技術スキルとしては、統計的手法の理解やデータ分析力、ISO9001などの国際規格や品質マネジメントシステムの知識、各種検査機器や測定機器の操作経験が挙げられます。
また、QC7つ道具やFMEA(故障モード影響解析)などの品質管理手法、製造工程や生産技術に関する基礎知識も重要です。
一方、現場との連携や業務推進に欠かせないソフトスキルとしては、調整力やコミュニケーション能力、分析力、報告力、問題解決力が求められます。
現場スタッフや他部署と協力しながら課題を抽出・改善策を立案し、分かりやすく報告・共有する力が不可欠です。
未経験者や異業種出身者でも、細かい作業への注意力や観察力、データや状況を冷静に分析する力、学ぶ意欲や責任感、コミュニケーション能力が評価されます。
また、理工系の基礎知識や前職での分析業務・改善活動の経験も強みとなるでしょう。
品質管理の年収

品質管理の平均年収は、一般的に450~470万円程度です。
令和5年度における日本人の平均年収が460万円であることを考えると、年収は同等程度かやや高めの傾向です。
ただし、実際の年収額は勤務している企業や就業形態、経験などによって異なります。
20代
厚労省が行った調査によると、20代の生産・品質管理技術者の年収は350~500万円です。初任給はそれほど多くはないものの、経験を積むことで年収が大きく増えることがうかがえます。
30代
同じく厚労省の調査では、30代の平均年収は600~670万円となっています。30代の間の伸びは比較的緩やかです。企業規模や役職、残業の有無などが年収額を左右する大きなポイントとなります。
40代
厚労省の調査における40代の生産・品質管理職の平均年収は760~800万円です。年齢を重ねるごとに順調に年収が伸びていることからも、生産・品質管理は経験がものをいう仕事であることがわかります。役職に就いて高収入を得るためには、コツコツとスキルを磨き、人脈を積み上げてゆくことが大切です。
組織風土・人材育成のポイント

生産管理において品質向上を実現するために必要なのは、システムや手順といった仕組みだけではありません。
組織風土と人材育成が不可欠です。
例えば、失敗を許容する風土や、チャレンジや提案を歓迎する文化づくりが品質改善の土台となります。
そのため、現場ではOJTや定期的な教育、改善提案制度を活用し、従業員一人ひとりの品質意識を高めなければなりません。
目的や意義を理解した自律的な人材を育てることが大切です。
一方、こうした組織文化を醸成するために経営層がしなければならないことは、経営理念やビジョンを現場と共有し、トップ自らが変革への姿勢を示すことです。
そうして現場と経営が一体となって品質向上に取り組むことで、持続的な成長と高品質なものづくりを実行できます。
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この記事の寄稿者
品質管理(QC)とは、製品やサービスの品質を安定的に維持するための活動です。
現場業務には工程管理・品質検証・品質改善があり、専門的な技術スキルと現場連携のためのソフトスキルが求められます。
また、組織風土や人材育成も品質維持・向上における重要な要素です。そのため、転職の際にはしっかりとした事前リサーチを行いましょう。
- 山田伸子