
計装士とは?資格概要から仕事内容、年収、活躍できる業界を解説
「計装士」の資格の概要や主な仕事内容、年収、さらに活躍できる業界についてわかりやすく解説します。
計装士は工場やプラントの安定した運用や業務の効率化に貢献する存在で、近年設備の自動化や省エネルギー化が進む中で注目されています。
計装士とは?

計装士は、工場やプラント、ビルの設備などで計測機器や制御システムを使いこなし、運転管理の効率化や安全性の向上に貢献する専門技術者です。
例えば、温度や圧力などを測るセンサーの設置や調整、保守作業を通じて、製造現場が安定して動くよう支えています。
「計装士」という資格は国家資格ではありませんが、国土交通省の制度に基づいて日本計装工業会が認定する公的な資格です。
そのため、特定の分野での専門性や信頼性を証明できます。
また、省エネルギーや省資源、防災・セキュリティ対策といった分野にも貢献しており、社会や産業の安定稼働を支える技術職といえるでしょう。
資格「計装士」の概要

計装士は、一般社団法人日本計装工業会が認定する、計測・制御システムに関する専門知識についての資格です。
ここでは、計装士の受験資格や試験内容、さらに合格基準や合格率についてわかりやすく解説します。
受験資格
計装士試験には「1級」と「2級」があり、どちらも学歴ではなく実務経験が受験資格の基準となっています。
つまり、現場での経験が重視されており、実践的な力を持つ技術者が対象です。
▼1級計装士の受験資格
1級を受験するには、計装工事の設計や施工に関する5年以上の実務経験が必要です。
ただし、2級に合格している場合は、4年6カ月以上の経験があれば受験できます。
その際、1年以上は指導や監督の業務に携わっていることが条件となります。
▼2級計装士の受験資格
2級は、計装工事の設計や施工に関する実務経験が2年以上あれば受験可能です。
学歴による制限はなく、現場での経験があれば誰でも挑戦できます。
このように、必要な経験年数を満たすことで、計装士としての専門性を証明するための第一歩を踏み出せます。
試験内容
試験は、1級と2級のどちらも「学科試験」と「実地試験」の2つの試験で構成されています。
まず学科試験に合格した後、実地試験に進み、両方に合格することで資格が認定されます。
▼学科試験
「学科A(3時間)」と「学科B(1時間)」の2部に分かれており、どちらもマークシート方式です。
学科Aでは計装の基礎知識や設備に関する問題が出題され、学科Bでは施工管理や関連する法律について問われます。
▼実地試験
4時間の記述式で行われ、計装設備の計画や設計図に関する実務的な内容が出題されます。
図面の作成も含まれるため、実務経験や論理的に説明する力が必要です。
実務経験に基づく知識とスキルが求められる試験なので、基礎力と実践力の両方をバランスよく身につけることが、合格への近道です。
合格基準・合格率
計装士試験の合否は、学科・実地の両方で正答率が55~65%の範囲に設定されています。
年度によって多少の違いはありますが、まずは60%以上の得点を目指して対策を進めるのが確実です。
この試験は実務経験者だけが受験できるため、受験者の専門性が高く、合格率も比較的高めです。
目安として、1級では学科試験の合格率が約60%、実地試験が約75%となっています。
2級の場合は、学科試験が約65%、実地試験が約85%です。
1級は2級よりも難易度が高く、より深い知識や判断力が求められます。
試験範囲をしっかりと把握し、段階的に学習を進めて合格を目指しましょう。
計装士の仕事内容

システム設計
生産ラインを自動化し、効率よく運用するためには、設備の特性に合ったシステムの構築が欠かせません。
そのためには、センサーや制御機器など多くの選択肢の中から、目的に最も適した機器や構成を選び、計測から制御までの流れを丁寧に設計する必要があります。
また、制御の方法や配線のレイアウト、機器の配置といった細かな部分も、図面や仕様書にまとめて全体像をわかりやすく示します。
こうした準備によって、現場での確実な運用が行えるようになります。
技術力と設計力を組み合わせることが、安定した生産体制を築くための土台となります。
施工や試運転
システム設計が図面としてまとめられた後は、現場での精密な施工の開始です。まず、計測機器や制御盤を設置し、配線や配管の作業をひとつひとつ丁寧に進めていきます。
こうして、設計通りのシステム構成を実現していきます。
次は、試運転を行い、計測値が正確かどうかや制御が正しく反応するかを細かく確認する工程です。
もし不具合が見つかった場合は、すぐに原因を調べて調整や修正を行い、システムが安定して動作するようにします。
このように、設計と現場がしっかり連携することで、理想とするシステムが実際の形となります。
設備保守
計装システムを安定して動かし続けるためには、日々の運用だけでなく、継続的な保守作業も非常に重要です。
例えば、センサーや制御機器の性能を維持するには、定期的な点検やメンテナンスを計画的に実施し、異常の兆しを早期に察知して対応できる体制を整える必要があります。加えて、機器の経年劣化や環境変化に応じた調整・交換も視野に入れた、柔軟かつ的確な判断が必要です。
このような予防的な取り組みを継続することで、思いがけないトラブルを未然に防ぎ、設備全体の信頼性や生産効率を長期にわたって安定的に維持することが可能になります。保守は単なる点検作業ではなく、システムの健全性を守るための戦略的な活動です。
計装士の仕事が「きつい」といわれる3つの理由

計装士の仕事は、専門的な知識が求められ、責任も重いため、「きつい」と感じる人もいます。
資格の取得難易度が高いため
計装士の資格を取得するには、国家資格に準じた厳しい試験制度と、実務経験の積み重ねが必要です。
そのため、合格の難易度は非常に高いといえます。
試験は「学科」と「実地」に分かれており、単なる暗記では対応できない記述式の問題も出題されます。
また、計装分野だけでなく、電気・機械・制御工学など幅広い知識が求められるため、専門性の高さが受験者にとって大きなハードルです。
独学で試験に臨むことも可能ですが、講習会への参加や先輩技術者からのアドバイスを活用することが、効果的な対策方法という声もあります。
こうした理由から、計装士は「取得が難しい資格」として広く知られています。
仕事自体に高い専門知識が必要なため
計装士の仕事は、単に機器を操作するだけではありません。常に技術の進歩と向き合いながら働く、高度な専門職です。
例えば、温度・圧力・流量などの物理的な数値を正確にコントロールする知識が必要です。
また、PLCやDCSといった制御装置についても、しっかり理解しておくことが欠かせません。
現場では新しい製品や技術が次々と登場するため、常に学び続ける姿勢が求められます。
さらに、トラブルが発生したときには、すぐに原因を見つけて正しく対応する判断力や、これまでの経験が重要です。
そのため、「きつい仕事」といわれることもあります。
知識と実践力の両方が必要とされる、まさに技術者としての力が試される仕事です。
現場の環境が厳しいため
計装士の仕事は、オフィスではなく、現場環境での作業が中心です。
例えば、工場やプラントでは、真夏の暑さや冬の厳しい寒さの中で機器の点検や調整を行うことがよくあります。
また、高い場所での作業や、狭い場所での配線作業、さらには化学物質を扱うエリアでの対応など、危険がともなう場面も多く、常に緊張感を持って仕事をしなければなりません。
さらに、設備は基本的に24時間動いているため、夜間や休日、長期休暇中でも緊急対応が必要になることがあります。
このような現場環境が、計装士の仕事を「きつい」と感じさせることがあります。
ただし、こうした職場環境は企業や業種によって異なるため、すべての現場が過酷というわけではありません。
転職の際には、募集要項や転職エージェントを通じて事前に確認しておくことが大切です。
計装士のやりがい・魅力

計装士の仕事は、高度な専門知識や技術を活かして、設備の安全性や効率を支える大切な役割を果たしています。
ここでは、計装士ならではのやりがいや日々の業務で感じる魅力について詳しく紹介します。
達成感がある
計装士の仕事は、社会インフラが安定して動くために欠かせない、重要な役割を担っています。
自分で設計し、調整したシステムが工場やプラントで正確に動き、生産性や品質の向上に直接つながる様子を実際に見ると、大きな達成感を味わえるでしょう。
また、建設工事の初期段階から関わり、安全性や環境への配慮、コストなど、さまざまな視点から設計を行います。
さらに、施工や試運転、保守まで一貫して担当するため、プロジェクトが完成したときには、全体を支えたという実感が残るでしょう。
加えて、大規模な設備や公共性の高い施設に携わることもあり、自分の技術が社会に役立っているという誇りが、仕事のやりがいにつながっています。
専門性が評価される
計装士は、計測や制御の技術に詳しい専門職として高く評価されています。
資格を取得することで、国から認められた技術者として信頼が証明され、現場や企業から大きなプロジェクトを任されるチャンスも増えるでしょう。
最近ではAIやIoTの普及によって設備の自動化が進み、計装技術のニーズは急速に高まっています。
そのため、優れた技術者を確保することが業界全体の課題です。
この分野では高度な知識が必要ですが、裏を返せば、学び続けることで着実にスキルを伸ばせる環境が整っているともいえます。
専門的な知識や技術がキャリアの強みとなり、自分の成長がそのまま評価につながる職種です。
最新技術に携わることができる
計装の分野は日々進化しており、AIによる制御やIoTとの連携など、次世代の技術が次々と導入されています。
計装士として働くと、こうした最新のトレンドに触れる機会が多く、センサーや制御機器の設計、調整を通じて、スマート化された設備の中心的な役割を担うことが可能です。
また、日本計装工業会では5年ごとに技術維持講習が行われており、資格を持つ人は常に新しい技術を学べる環境が用意されています。このように、新しい装置や技術に対応する力が求められる分野だからこそ、継続的にスキルを高めることができ、技術者としての成長を実感できる魅力的な職種です。
計装士の年収

計装士の年収は、雇用形態や勤務地、経験年数、年齢などによって幅があります。
一般的な目安は、年収450万円から750万円とされており、資格の有無や実務経験が収入に大きく影響します。
計装士の資格を取得するには、一定の実務経験が必要です。
そのため、資格を持っていることで専門性が評価され、企業によっては資格手当が支給される場合もあります。
中には、数万円の加算や出向手当がつくこともあり、待遇面で優遇されることが期待できます。
なお、未経験者は月給20万円前後からスタートすることが多い傾向ですが、経験を積むことで年収アップが見込める職種です。
計装士として活躍できる業界

計装士は幅広い業界で必要とされ、その技術力は安全性や効率向上に直結します。
ここでは、計装士が活躍できる具体的な業界について解説します。
プラント業界
計装士がその力を発揮できる代表的な分野のひとつが、プラント業界です。
発電所や化学工場、上下水処理施設など、複雑で大規模な設備が集まる現場では、計測や制御の専門的な技術が必要不可欠です。
さまざまな機械が連携して動くため、計装士は現場の「頭脳」として、安全性と効率性を守る重要な役割を担っています。
また、国内だけでなく海外のプロジェクトに関わるチャンスもあり、グローバルに活躍できる可能性が広がっています。
さらに、資格手当や高水準の報酬が期待できる点も、プラント業界ならではの大きな魅力です。
化学工場のプラントで活躍する化学系・機械系・電気系エンジニアについては、以下の記事で紹介しています。
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この記事の寄稿者
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