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CAE技術者とは?仕事内容や認定試験の難易度、技術者の年収などを解説

CAE技術者とは?仕事内容や認定試験の難易度、技術者の年収などを解説

製品開発の現場では、試作や実験ではなく設計段階で性能を検証できる「CAE」が活用されています。

CAE技術者は、この解析技術を駆使して開発の効率化と品質向上を支える専門職です。本記事では、CAE技術者の仕事内容や平均年収、関連資格などを解説します。

CAE技術者(CAEエンジニア/計算力学技術者)とは?

CAE技術者(CAEエンジニア/計算力学技術者)とは?

そもそもCAEとは、”Computer Aided Engineering(計算機援用工学)”の略称で、解析ソフトを利用して製品開発のシミュレーションをする技術を指します。CAE技術者(別称:CAEエンジニア/計算力学技術者)は、このCAE技術を活用して製品開発を支援する専門職です。

CAE技術者は、製品の設計者が作成したモデルをもとに、製品が現実の環境下でどのように挙動するかを仮想的に予測・分析する役割を担います。具体的には、専門的な解析ソフトを用いて、構造・熱・流体・振動などの面からシミュレーションを行い、製品の性能や安全性などを事前検証します。

これにより、試作や実験の回数を減らし、製品開発に要する期間とコストを大幅に削減することが可能です。

もちろん、シミュレーションを繰り返す中で、製品そのものの品質向上にも大きく貢献します。そのため、CAE技術者の需要は高まっています。

CAE技術者の仕事内容

CAE技術者の仕事内容

CAE技術者の主な仕事は、設計段階で製品の性能や安全性を検証するために、CAE解析ソフトを用いてシミュレーションを実施することです。

設計者から渡された3Dデータや条件値(荷重・温度・速度など)をもとに、構造解析・熱解析・流体解析などを行い、実際の使用環境を仮想的に再現します。

解析の過程では、パラメータ設定や境界条件の定義など、解析精度を左右する要素を慎重に調整します。

そして解析結果から変形量や応力分布、温度変化などを数値化して設計上の課題やリスクを特定します。

最終的にはその結果を設計者にフィードバックし、必要に応じて製品改善の助言や提案を行います。


変更が行われた場合は、再度のシミュレーションが必要です。

どのような設定・条件で解析するかによって解析速度や解析精度は大きく変化するため、CAE技術者には高度な知識や経験が求められます。

CAE技術者の平均年収

CAE技術者の平均年収

CAE技術者の平均年収は約500万円~700万円です。

これは日本人の給与所得者の平均年収約478万円を上回る水準であり、専門性の高い職種として安定した収入が見込めます。

CAE技術者の年収は、経験年数や担当領域、勤務先企業の規模などによって大きく変わります。

たとえば、自動車・航空機・エネルギーなどの大手メーカーで解析業務に携わる場合は、700万円以上の高年収となる場合があります。

特に、構造解析流体解析など高難度領域のスキルを持つ技術者は、コンサルタントとして関わる場合、年収1,000万円を超えるケースもあります。


一方、受託解析業務を行う中小企業や派遣契約では400〜500万円台に留まることもあります。


そのため、CAE技術者として高年収を目指す場合は、スキルを高めるとともに、計画的にキャリア形成を進めることが大切です。

CAE技術者の将来性

CAE技術者の将来性

CAE技術者の将来性は非常に有望です。近年、製造業を中心にDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進み、開発工程のデジタル化が標準化しつつあります。従来のように試作と実験を繰り返す方法では時間もコストもかかるため、設計段階で性能を検証できるCAE解析は不可欠な技術として定着しつつある状況です。


また、AI・IoT・5Gといった先端技術の発展により、解析で扱うデータ量やシミュレーション精度は飛躍的に向上しています。

現実空間と仮想空間を連動させる「デジタルツイン」などの新しい概念も広がり、CAEの応用範囲は自動車・航空機・家電・建設・エネルギーなど多分野へ拡大しています。


しかし、CAE解析の需要が急速に増えつつある一方で、複雑な解析を正確に扱える専門人材は不足しています。

そのため、CAE技術者の市場価値は非常に高くなっており、将来的にもさまざまな業界で活躍の場が広いと予想されます。

CAE技術者に向いている人の特徴

CAE技術者に向いている人の特徴

CAE技術者の仕事は、最先端の解析ソフトを扱う高度な専門職であると同時に、地道な試行錯誤を繰り返す粘り強さも求められる職種です。

単に理系の知識やソフト操作ができるだけでなく、課題を発見し、原因を突き止め、最適な解決策を導き出すための思考力と集中力が大切です。


ここでは、CAE技術者に向いている人の主な特徴を3つ紹介します。


課題解決能力がある人

CAE技術者には、シミュレーション結果を正確に読み取り、そこから設計上の課題を発見して解決策を導く力が欠かせません。

解析結果が想定と異なる場合、その原因を入力条件・境界設定・解析モデルなど複数の要素から論理的に検証し、最も妥当な対応策を見つけ出す必要があります。

また、CAE解析は一度で正解にたどり着くことは少なく、仮説を立てては検証を重ねる反復作業の連続です。

常に「なぜそうなるのか」を考え、問題をひとつずつ解決していく探究心と論理的思考力が、信頼できる解析を実現する原動力です。


観察力が高い人

CAE解析では、数値や画像データのわずかな異変を見逃さない観察力が求められます。

入力パラメータの単位や桁数の誤りなど、ほんの小さなミスでも結果が大きく変わるため、細部まで注意を払わなければなりません。

また、解析結果を現実の物理現象と照らし合わせ、差異が生じた場合にはその原因を特定する洞察力も必要です。

たとえば、応力の集中箇所や温度分布の偏りなどを見抜き、設計の改善提案につなげる力が成果に直結します。

細やかな確認を怠らず、データの背後にある「意味」を読み取れる人はCAE技術者に向いています。


我慢強く粘り強い人

CAE技術者の仕事は、精度を高めるための地道な試行錯誤の積み重ねです。

複雑な構造モデルや非線形解析では、一度の解析に数時間から数日かかることもあります。

思うような結果が得られない場合でも、原因を探り、条件を変えて再解析を繰り返す根気が必要です。

また、解析業務には「待ち時間」や反復作業が多く、集中力と忍耐力を保ちながら長期的に成果を出す姿勢が求められます。

結果を急がず、地道な努力を積み重ねていける人ほど、CAEの現場で確実に力を発揮できます。

CAE技術者を目指す方法

CAE技術者を目指す方法

CAE技術者は高度な知識とスキルが要求される専門職です。

そのため、CAE技術者になるためには、以下のような学習を進めることが求められます。


CAE関連の基礎知識や解析ツールを学ぶ

CAE解析を行うには、材料力学・熱力学・流体力学などの工学的な知識が求められます。

こうした知識がなければ、圧力(荷重)や熱などに対して製品がどのような挙動・耐久性を示すか基本的な理解もおぼつかなくなるからです。

また、有限要素法(FEM)を代表とする、CAE解析に必要な手法・理論について学ぶことも欠かせません。

また、解析作業では専門的な解析ツールを扱うため、それらのソフトウェアに関する知識やスキルも大切です。

これらは独学よりも、大学や職業訓練校、オンライン講座など、体系的に学べる環境を活用するのがおすすめです。


CAE関連の資格を取得する

CAE解析の業務に携わるうえで資格は必須ではありません。

しかし、専門知識を客観的に証明する手段として、関連資格の取得が非常に有効です。

資格取得は転職や昇進などを目指す際のアピール材料にできます。

それだけでなく、試験勉強を通して、CAE解析に必要な知識の理解を体系的に深められる点も大きなメリットです。

資格取得という分かりやすい目標を設定することで、学習のモチベーションも高めやすいでしょう。


詳しくは後述しますが、CAE関連資格の代表例としては、業界での評価が高い、日本機械学会が運営する「計算力学技術者認定資格制度(別称:CAE技術者認定資格制度)」の資格取得が挙げられます。

CAE技術者の認定資格

CAE技術者の認定資格

前項で述べたとおり、CAE技術者として専門性を高めるうえで、日本機械学会が実施する「計算力学技術者」認定資格は非常に有用です。

この資格は、「固体力学」「熱流体力学」「振動解析」の3分野に分かれており、それぞれ初級・2級・1級・上級アナリストの4階級が設けられています。以下では、CAE未経験者を想定し、初級を中心に各資格の概要を解説します。

固体力学分野の有限要素解析技術者

「固体力学分野の有限要素解析技術者」は、CAE解析で最も基本となる構造解析に関するスキルを認定する資格です。

初級では、有限要素法(FEM)に基づく線形応力解析の手順や理論の基礎を理解し、上位資格者の監督下で基本的な弾性解析を実施できるレベルが求められます。固体力学の知識は、製品の構造強度や耐久性を評価するために有用です。


ほかの分野にも共通することですが、初級の認定は試験ではなく、日本機械学会が公認する技能講習の受講が条件です。

この講習では、実際にCAEソフトを使いながら必要なスキルの習得を目指します。

実務経験などの受講要件もないため、CAE未経験者は最初にこれを受講するのがおすすめです。


熱流体力学分野の解析技術者

「熱流体力学分野の解析技術者」は、熱や流体の挙動を数値解析で再現・評価するスキルを証明する資格です。

初級では、流体力学・伝熱学も含む熱力学の問題に関する基本手順の理解が求められます。

目指すレベルは、固体力学分野と同じように、上位資格者の監督下で基本的な熱流体問題を適切に解析できることです。

熱流体力学の知識は、電気製品やエンジンの冷却性能や燃焼効率、あるいは流体抵抗(空気抵抗)などを計算するのに役立ちます。


振動分野の有限要素法解析技術者

「振動分野の有限要素法解析技術者」は、外的な衝撃や振動に対する構造物の強度や挙動を解析するための知識を認定する資格です。

初級では、有限要素法を用いた振動解析の基本手順を理解し、上位資格者の監督下で自由振動・強制振動などの基礎的解析を適切に行えることが求められます。

振動分野の知識は、自動車や航空機(エンジン)、建造物(地震)など、製品の安全性や性能に振動が大きく関わる場合に有用です。

CAE技術者への転職ならメイテックネクスト

CAE技術者への転職ならメイテックネクスト

CAE技術者への転職を検討している場合は、エンジニア向けの転職支援サービスの弊社「メイテックネクスト」を利用するのもおすすめです。

以下では、弊社を利用してCAE技術者への転職を成功させた事例を紹介します。


エージェントからのアドバイス

CAE技術者の採用市場は、防衛・航空宇宙・自動車といった業界や、開発工程においてよりシミュレーションを重要視する領域を中心に活発です。単一の事象を解析するだけでなく、熱と流体のように複数の物理現象を複合的に扱えるスキルが求められています。

たとえば、熱解析のみの経験よりも、熱流体解析まで対応できる人材が重宝される傾向です。

その他、解析経験は少なくとも機械設計の経験を有し、CAE解析の指示と解釈をしていた方は未経験でも採用されるケースがあります。

 

採用が決まりやすい方の共通点として、まず挙げられるのは「物理現象への関心の深さ」です。

物理学を専攻した方が活躍するケースも多くいです。

人物的には、知的好奇心が強く、ひとつの課題を多角的に検討できるタイプが評価されています。

CAE業務はルーティンワークの側面もあるため、決まった業務でも工夫しながら飽きることなく継続できる方が向いています。

 

他業界からの転職も増えています。防衛・航空宇宙領域の人材が少ないため、自動車やプラント業界での解析経験者が転職に成功しています。

電気系解析(電磁波解析・ノイズ解析など)の経験者は、業界を問わずスキルの親和性の高いさが重要です。

 

企業が面接で注目するポイントも変化しており、解析スキルそのものよりも「解析条件と解析方法を検討し設計仕様に合致したシミュレーションを構想できるか」が重視されています。ケーススタディ形式で思考プロセスを問う質問が増えている点も意識しておくと良いでしょう。

 

転職活動においては、CAE解析経験3年以上など、即戦力を求める傾向が強まっています。

CAE解析の知識に加え、シミュレーション全体を理解している方は高く評価されます。

また、MATLAB/Simulinkを用いたモデルベース開発やシュミレーション技術の対応、 1D-CAEとして物理現象の簡略化モデル高速シミュレーション技術対応、有限要素法(FEM)を用いた技術対応などのスキルがあると評価される傾向にあります。

 

今後はCAEとDX、AI、データサイエンスとの融合、モデルベースとの融合などがより加速していく流れとなっています。

単なる一事象の解析にとどまらず、他部門と連携する視点を持つことが、キャリアを広げる鍵となるでしょう。

CAE技術者に関連したよくある質問

CAE技術者認定資格の受験資格は?

計算力学技術者認定資格には、「固体力学分野」「熱流体力学分野」「振動分野」の3分野があり、いずれも初級・2級・1級・上級アナリストの4段階に分かれています。大まかな受験資格・レベルは次のとおりです。


初級:

レベル:上位の有資格者の指導のもとで、基礎的な解析業務を行える

受験資格:なし(公認技能講習会の受講・修了によって認定)


2級

レベル:基本的な解析業務を1人で行える

受験資格:以下のいずれかに該当すること

・公認技能講習会の受講

・受験分野に関連する3年以上の実務経験

・受験分野に関連する修士または博士学位 など

※2級の受験資格は分野ごとに異なります。


1級

レベル:高度な解析を1人で行える

受験資格:

・受験分野の2級資格を取得済または2級と同時併願すること


上級アナリスト

レベル:CAEプロジェクトの企画やマネジメント、プレゼンテーションが適切にできる

受験資格:以下の要件の両方に該当すること

・受験分野の1級資格を保有していること

・7年以上の実務経験があること


CAE技術者認定資格を取るメリットは?

CAE技術者認定資格は級別に受験レベルや実務経験が設定されているため、自分のスキルやキャリアを客観的に証明する手段になります。

そのため転職やキャリアアップにも大きなアピール材料にできます。

また、資格勉強を通して体系的に知識を身につけ、自信やモチベーションを高めることもできます。


この記事の寄稿者

CAE技術者は、シミュレーション技術を駆使して製品開発の効率化と品質向上を支える専門職です。

年収も高い傾向があり、さまざまな分野で活躍できる可能性があります。

高い解析スキルと論理的思考が求められますが、その分やりがいも大きく、将来性も十分にあります。

計算力学技術者など関連資格の取得は、転職やキャリアアップにも有効です。

山田伸子
山田伸子

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