エネルギー管理士とは?仕事内容や年収、活躍する業界、試験概要まで解説
エネルギー管理士は、省エネ法に基づき、工場やビルでエネルギーの効率的な利用について、必要な措置を担う専門職です。
設備の点検や監視に加え、改善に向けた具体的な提案を行い、省エネとコスト削減の実現を目指します。
本記事では、エネルギー管理士の仕事内容や年収、活躍分野、さらに試験の概要までをわかりやすく紹介します。
エネルギー管理士とは?選任が義務づけられている国家資格

エネルギー管理士は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」に基づいて設けられた国家資格です。
一定規模以上の工場や事業所では、この資格を持つ人材の選任が義務づけられています。
エネルギー管理士は、設備の維持やエネルギー使用量の監視を通じて効率的な運用を進める役割を担う存在です。
さらに、省エネの推進を通じて、カーボンニュートラルの実現にも貢献します。
資源の有効活用や温室効果ガス削減が社会的課題となっている現在、エネルギー管理士は事業所の持続的な運営に欠かせない存在です。
環境対策に貢献する専門職のひとつとして、ますます注目が高まっています。
選任義務が発生する事業者
省エネ法では、年間のエネルギー使用量が原油換算で1,500㎘以上となる工場や事業所を「エネルギー管理指定工場等」と定め、管理者の選任と定期的な報告を義務づけています。
特に3,000㎘以上を使用する第一種指定工場では、エネルギー管理士免状を持つ人を管理者として選任しなければなりません。
製造業や鉱業、電気・ガス・熱供給業の事業所が該当することが多いものの、データセンターや大規模商業施設なども対象となります。
景気変動の影響を受けにくい分野が多く、資格需要も安定しています。
エネルギー管理士試験の概要

ここでは、一般財団法人省エネルギーセンターが行っているエネルギー管理士試験について、受験資格や試験形式、試験の難易度等を、わかりやすく解説します。
受験資格
エネルギー管理士試験は、年齢・学歴・職歴に制限がなく、誰でも受験可能です。
ただし、試験に合格しただけでは直ちに資格者として法的に認められるわけではありません。
管理者や管理員として正式に選任されるには、経済産業大臣への免状交付申請が必要です。
免状申請の詳細は後ほど説明しますが、この手続きを経て初めて「エネルギー管理士」として社会的効力を持つ資格となります。
試験日程と形式
本試験は毎年夏、全国10都道府県の試験地で実施されます。
試験地は希望できますが、試験会場は受験票にて通知され、受験者が自ら選択することはできません。
例年試験は7月下旬から8月上旬の日曜日に行われ、申込期間は4月上旬から6月中旬までとなっています。
手続きは郵送またはインターネットで行えます。
試験は筆記によるマークシート方式で、4科目を午前から午後にかけて4時限に分けて実施します。
ただし、科目(科目I、II、Ⅲ、IV)の順番と時限(1、2、3、4時限)の順番は一致しないため、受験者は当日の時間配分に注意が必要です。
試験科目の電気区分/熱区分の仕事の違い
エネルギー管理士試験は、「電気」と「熱」分野専門区分のいずれかを選んで受験する方式です。
電気区分では、受変電設備や電動機、インバータなどを対象に、電力の効率化、高調波対策、力率改善といった電気エネルギー管理の知識が問われます。
熱区分では、ボイラーや蒸気、熱交換器を中心に、燃焼理論や排熱回収など、熱エネルギーを効率的に利用するための内容が出題されます。
どちらの区分でも、設備全体を俯瞰して省エネルギーを考える力が必要です。
試験の難易度と合格率
エネルギー管理士試験は難関資格で、2025年度の合格率は約34%でした。
公表される合格率には、科目ごとの合格を積み重ね、3年間の科目免除制度を利用した受験者も含まれています。
そのため、すべての科目を一度で突破する難易度は、数値以上に高くなる可能性があります。
実際には、複数年にわたり科目合格を積み上げることで、最終的に資格取得へとつながる仕組みが整っています。
そのため、計画的かつ戦略的な学習が必要です。
(参照元:ECCJ 省エネルギーセンター / エネルギー管理士試験 合格者発表)
合格発表と合格後の免状交付申請
合格発表は、毎年9月下旬に官報で受験番号が公示され、全受験者には通知書が郵送されます。
また、省エネルギーセンターの公式サイトでも合格者の番号が掲載されます。
通知書を受け取った後は、資格者として活動するために免状交付の申請が必要です。
申請には、合格通知書や申請書、勤務先が発行する「エネルギー使用合理化実務従事証明書」などが必要です。
必要書類は状況により異なるため、ECCJの案内を確認しましょう。
申請した時点で、エネルギー使用合理化に関する実務に1年以上従事していなければなりません。
転職した人は、以前の勤務先からも証明書を取得しておきましょう。
なお、免状交付権者は経済産業大臣ですが、申請先は省エネルギーセンターです。
書類の不備を防ぐため、簡易書留で郵送することが推奨されています。
エネルギー管理士のおもな仕事内容

エネルギー管理士は、工場や事業所におけるエネルギーの利用を最適化し、事業の安定的な継続を支える大きな役割を担っています。
具体的には、法令を遵守しつつコスト削減を図る「守り」の業務と、新しい省エネ技術の導入や効率向上を推進する「攻め」の業務の両面が必要です。
ここでは、エネルギー管理士が現場で実際に取り組むおもな業務について紹介します。
エネルギー使用量の計測・分析
工場やプラントにおける電力・蒸気・ガスの消費量を正確に把握することは、エネルギー管理士の大事な役割です。
IoTセンサーやEMS(エネルギーマネジメントシステム)を活用して使用状況を「見える化」し、異常を早期に検知します。
さらに、単なる数値収集にとどまらず、生産量あたりのエネルギー消費を定期的に測定し、ベンチマークを設定して目標との差を分析します。
需要がピークとなる時期には、生産ラインの稼働予測や設備負荷の変動を踏まえ、負荷平準化のシミュレーションを行い、デマンドコントロールを確実に実施します。
これらの取り組みにより、省エネの推進、コスト削減、環境負荷の低減を実現します。
生産設備・ユーティリティ設備の投資・改善
エネルギー管理士は、設備の計測やデータ分析の結果をもとに、効率の悪い設備や運用方法を特定し、改善策を提案します。
改善活動は大きく分けて2つあります。
ひとつは低コストで即効性のある運用改善、もうひとつは高額な設備投資(CAPEX)を伴う更新計画です。
例えば、空調機の室外機フィンの洗浄や照明の間引きは日常的に行える運用改善にあたります。
一方、LED照明や高効率誘導灯への更新は、長期的な効果を期待できる設備投資です。
これらの取り組みにより、省エネルギーとコスト削減を同時に実現することが可能になります。
法定書類の作成など、行政対応
エネルギー管理士は、省エネ法に基づき企業と行政の間で橋渡し役を担います。
具体的には、毎年提出が義務づけられている「エネルギー使用状況報告書」を作成し、設備や運用方法が管理基準に適合しているかを確認します。
さらに、行政からの省エネ指導を踏まえ、照明のLED化や空調効率の改善など、実際的な対策を実施します。
これらの取り組みにより、法令遵守と同時にコスト削減も実現できます。
現場部門(生産・設備保全)との連携
生産ラインの稼働状況に応じてエネルギー負荷を最適化するには、現場各部門との緊密な連携が欠かせません。
例えば設備保全チームと協力し、定期点検や改修の際に省エネ効果を最大限発揮できるよう調整します。
設備を停止する場合には、生産計画と照らし合わせて効率的な省エネ策を検討します。
さらに、全作業者を対象に教育や啓発活動を行い、「省エネは自分事である」という意識を現場全体に浸透させる役割も担います。
エネルギー管理士の年収

求人情報では、エネルギー管理士の年収は500万~650万円前後とされているケースが多くを占めています。
特に大企業の工場やビル管理部門で働く場合、資格手当や福利厚生が充実していることが多く、安定した収入を得やすいのが特徴です。
2024年の国税庁の調査による日本の給与所得者の平均年収478万円と比べると、やや高めの水準に位置します。
さらに専門性を磨けば年収アップも期待でき、責任者候補や設計職では700万円以上に達するケースもあります。
エネルギー管理士の将来性

近年は、脱炭素社会の実現やカーボンニュートラル政策の推進により、エネルギー管理士の需要が安定して拡大しています。
さらにDX、AI、IoTの導入が進むことで、その業務内容も従来の報告業務にとどまらず、データ分析を活用した戦略立案や投資判断の支援など、より高度な役割を担うようになっています。
加えて、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)やZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及も追い風となり、建築や住宅分野を含め幅広い業界で活躍の場が広がっていくことが期待されます。
エネルギー管理士が活躍するおもな場

エネルギー管理士は、エネルギーを多く使う現場を中心に、さまざまな分野で専門的な知識や技術を活かしながら活躍できる仕事です。
ここでは、エネルギー管理士が活躍するおもな現場と、それぞれの特徴について解説します。
製造業
製造業は、エネルギー管理士の需要が最も高い分野のひとつです。
大規模な設備や加熱炉、ボイラーを備える現場では、エネルギーコストが製品原価に直結するため、専門的な管理が欠かせません。
化学・素材産業における熱回収をはじめ、自動車、電子機器、食品、医薬品など幅広い分野で管理士が活躍しています。
さらに半導体工場では、クリーンルームの空調や超純水の製造に膨大な電力が必要です。
エネルギー使用量が多いこのような大規模工場では、エネルギー管理士の存在は不可欠です。
建築・設備(ゼネコン・サブコン)
ゼネコンやサブコンは、新設される工場やビルに対し、省エネ法に基づいた設計や施工管理を担います。
設計段階では、エネルギー管理士が高効率な機器を選定し、シミュレーションを通じて建物が基準を満たすかを検証します。
こうした専門的な取り組みは、省エネ性能を確保し、持続可能な建築を実現するうえで欠かせない役割を担います。
データセンター
データセンターは膨大な電力を消費する施設であり、安定した運営には高度なエネルギー管理が欠かせません。
特に電力使用の効率化は運営上の主要な課題で、冷却設備の最適化が成否を左右します。
チラーや空調機を適切に制御するには、電気と熱の両面にわたる専門知識が必要です。
そのため、エネルギー管理士のように、幅広い知識と技術を組み合わせて設備のエネルギー管理ができる人材が求められています。
エネルギー管理士とあわせて取得したい電気主任技術者

エネルギー管理士に、電気主任技術者(電験)や公害防止管理者といった資格を組み合わせることで、エネルギー分野での専門性は一段と高まります。
例えば電験を取得すれば、電気設備の保安監督から保守まで幅広く対応でき、省エネ計画と設備管理を一体的に進められる人材として評価されやすくなります。
さらに、公害防止管理者としての知識を身につけることで、環境負荷の低減とエネルギー最適化を同時に実現でき、企業の環境経営を総合的に支える役割も担えるようになります。
このように複数の資格を組み合わせることで、現場での活躍の幅が広がり、専門家としての信頼性もより高まります。
エネルギー管理士に関するよくある質問(Q&A)

ここでは、エネルギー管理士についてよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめています。
気になる点について、わかりやすく解説します。
電験3種とエネルギー管理士ではどちらが難しいですか?
電験3種とエネルギー管理士を比べると、難易度は電験3種のほうがやや高いとされています。
最大の違いは、試験範囲の広さと必要な学習量です。
電験3種は4科目にわたり、基礎から応用まで幅広い知識が求められます。合格率は毎年10〜20%台と低めです。
(参照:一般財団法人 電気技術者試験センター|第三種電気主任技術者試験の試験結果と推移)
一方、エネルギー管理士は応用力こそ必要ですが、出題範囲が比較的絞られており、合格率も約30%と、電験3種よりは高めです。
まとめると、「広く深く学ぶ電験3種」と「狭く深く取り組むエネルギー管理士」という構図になり、総合的には電験3種のほうが取得難易度は高いと言われています。
エネルギー管理士は今後どうなりますか?
エネルギー管理士は、脱炭素化の加速やエネルギー価格の上昇を背景に、今後さらに活躍の機会が広がる資格です。
省エネ法により工場やビルでの配置が義務づけられているだけでなく、近年はコンサルティング業務や自治体のエネルギー施策、再生可能エネルギー関連事業など、活躍の場が大きく広がってきています。
エネルギー効率化の専門家としての需要は、今後も確実に増えていくと考えられます。
エージェントからのアドバイス

エネルギー管理士を取り巻く転職市場は、現在も活発な動きが続いています。
特に、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが加速する中で、HEMS・BEMS・FEMS・CEMSといったエネルギーマネジメント領域全般、つまり住宅・ビル・工場・地域や企業全体といった各レイヤーにおいて、企業の採用ニーズは着実に拡大しています。
求人内容においても、単なる資格保有だけでなく、エネルギー効率化を軸にした「見える化」の実務経験や、工場全体のエネルギーをプロセス変更によって省エネ化した経験が、より重視される傾向にあります。
実際に採用が決まりやすい方には共通点があります。
環境問題への対応に強い関心を持ち、目立つ役割ではなくとも実直に裏方として行動できる姿勢を備えている点です。
また、プラントなどエネルギー使用量の大きい業界での省エネ化経験や、カーボンニュートラル実現に向けた具体的な取り組み経験を持つ方は、高く評価されやすい傾向があります。
転職成功例は業界を横断して見られますが、なかでもエネルギー使用量の親和性が高い業界同士での転職が多くなっています。
一方で、業界全体としては比較的古い体質が残っており、面接時に企業が注目するポイント自体は大きく変わっていないのも実情です。
そのため、奇をてらうよりも、これまでの経験を具体的かつ丁寧に伝えることが重要です。
また、特定の業界の出身であることや年齢層が有利というよりも、省エネ化やカーボンニュートラルに携わった経験を有しているかどうか重要です。
機械系の方であれば、ボイラーや空調分野の経験を積むこと、電気系であればHEMSなどのバッテリーマネジメントシステムや電力の見える化に関する知識・経験を深めることが有効です。
また、プラントプロセス系の方には、プロセスの省力化や設備知識の幅を広げる意識が求められています。
ご自身がこれまでのどのような経験を積み、今後どのように活躍していきたいのかを整理したうえで行動することが、次のキャリアにつながります。
専門性が評価される市場だからこそ、早い段階で情報収集と準備を進めていきましょう。
この記事の寄稿者
エネルギー管理士は、省エネ法に基づき工場やビルのエネルギー使用を最適化する国家資格です。需要が安定しており、専門職として幅広い現場で活躍しています。試験は難易度が高いものの、計画的に学習すれば十分に合格を目指せます。今後は脱炭素化やDXの進展により、将来性がさらに広がる職業です。

- 幡多秀駿