
工場の品質管理とは?仕事内容や代表的な手法、役立つ資格を紹介
工場で製造する製品の品質を維持するために欠かせない仕事が、品質管理(QC)です。
品質管理への転職を検討している方は、本記事を読むことで、品質管理の仕事内容や品質保証(QA)との違い、品質管理で活用される手法、役立つ資格などを理解できます。
工場の品質管理とは?

品質管理の意味
工場における品質管理とは、不良品やトラブルの発生を防ぎ、ユーザーのニーズや規定された品質基準に適合した製品を、安定的に生産し続けるための管理・検証・改善の取り組みを指します。
英語で「Quality Control(品質管理)」と呼ばれ、その頭文字を取って「QC」と略されることが多く、現場でも一般的に使用されています。
品質管理の具体的な業務には、製品検査や品質規格の策定、生産体制の整備、製造プロセスの設計・見直しなどが含まれます。
製造中に発生した品質上の問題を可視化し、根本原因を突き止めたうえで改善策を講じることも、重要な役割のひとつです。
さらに、課題の抽出から改善までを繰り返す「PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Act)」を回すことで、品質だけでなく生産性の継続的な向上も期待できます。
品質管理(QC)と品質保証(QA)の違い
「品質保証(QA=Quality Assurance)」は、「品質管理(QC)」と混同されがちですが、両者は目的や役割が異なります。
品質保証とは、製品やサービスがあらかじめ定められた基準を継続的に満たすよう、組織全体の体制やプロセスを構築・運用する取り組みです。
代表的な仕組みとして「ISO 9001」などの品質マネジメントシステム(※)があり、出荷後のユーザーフィードバックを分析し、品質向上に反映させる仕組みも品質保証の一部に含まれます。
いずれも製品の品質に関わる活動ですが、担当する業務の範囲や責任の所在、品質への関与期間などに明確な違いがあります。
※ISO(国際標準化機構)が定める、品質マネジメントシステムに関する国際規格群
【業務の範囲】
品質管理は、製造者側の視点に立って製造時の品質を管理する業務なので、範囲は基本的に製造工程のみに限られます。
一方、品質保証はユーザー側の視点に立って品質を保証する業務なので、範囲は規格の決定から原材料の選別と仕入れ、設計、製造、販売、出荷、アフターサービスまで多岐にわたります。
製品出荷後もクレーム対応などにあたり、顧客から寄せられた改善点を各部門にフィードバックします。
製品にまつわる全工程に携わる点が特徴であるため、品質管理は品質保証の一部と位置づけられることが一般的です。
【責任を負う期間】
完成品の品質を管理する品質管理では、製品の完成まで責任を負います。
一方、品質保証では規格の決定や製造のみならず、製品を販売してユーザーの手に渡った後も、品質を保証する義務があります。
よって、責任を負う期間は品質管理よりも長期です。
【責任の範囲】
前述した通り、品質管理において責任を持つのは、製品の出荷時点までです。
それ以降の責任に関しては、品質保証の範囲となります。
「製品がすぐ壊れた」などのトラブルが発生した場合は、製造現場にフィードバックされ、品質管理にて改善を行いますが、ユーザーからのクレームに直接対応することはありません。
品質保証では製品の品質だけではなく、アフターサポートなど製品以外の質に関しても責任を負います。
良質な製品をユーザーに届けるには、品質管理と品質保証を別々に考えるのではなく、相互に連携しながら品質の向上を図ることが重要です。例えば、品質保証で集めたユーザーからの声を製造現場にフィードバックし、製品の改善や新製品の開発に活かしたり、品質管理を徹底して不良品を減らす工夫をしたりすることで、全体的に顧客満足が向上します。
工場における品質管理の仕事内容

工場における品質管理は、「工程管理」「品質検証」「品質改善」の3つの要素で構成されています。
工程管理
工程管理とは、製造工程や作業手順が適正な状態に維持できるように管理することです。
具体的には、生産ラインの各工程における作業手順書などを作成し、製造プロセスを標準化することなどが挙げられます。
品質を維持するための人材教育も、工程管理のひとつです。
標準化した作業手順を忠実に守って製造を行えば、品質のばらつきや不良品・不適合品の発生を抑えられます。
さらに、工場の設備管理も工程管理に含まれています。
定期的に設備の点検を行うことで、異常や劣化、摩耗などをいち早く発見し、部品の交換や修理などを速やかに済ませられます。
これにより、製品の品質を維持できるだけではなく、故障や事故の予防も可能です。
また、リスク予防を目的とした工場への生産管理システムの導入も、設備管理として扱われます。
システムを導入すれば、人的コストを抑えながらミスや異常を感知できるので、生産性の向上も同時に実現します。
品質検証
品質検証とは、製品の品質を担保するために、完成品や製造工程に問題がないか、検査や監視を行うことです。
具体的には、原材料や部品などをチェックする「受け入れ検査」、製造ラインの途中で外観の傷汚れや異物混入などをチェックする「工程内検査」、完成品の機能や動作をチェックする「最終検査」、倉庫の在庫を出荷する際にチェックする「出荷検査」などが該当します。
さらに、製造ラインの手順や環境が適正かどうかや、システムや検査が正常に運用されているかどうかなどを確認・監視することも、品質検証に含まれます。
このように、各工程でさまざまな検査や監視を行うことにより、不良品や不適合品の発生を減らして、ユーザーからのクレーム予防につながります。
品質改善
品質改善とは、不良品や不適合品が発生した場合に、その原因や現状の課題を分析し、再発防止のために解決・改善に努めることです。
現状や原因の分析は、正確なデータに基づいて行わなければなりません。
データの収集・分析・評価には、「QC7つ道具」と呼ばれる手法がよく活用されています。
これを構成する要素が、「パレート図」「ヒストグラム」「特性要因図」「グラフ」「管理図」「散布図」「チェックシート」の7つです。
さらに、後述する4Mに基づいて原因を考える「4M分析」や、“Why(なぜ)”を5回繰り返すことで、原因を追及する「5Why分析」などの手法も活用されています。
また、不良品や不適合品が発生した後だけではなく、製品の開発や生産準備の段階で課題を洗い出し、発生を未然に防ぐことも品質改善のひとつです。
品質管理の主な手法

品質管理の代表的な手法として、「5S」と「4M」が挙げられます。
5S
5Sとは、品質管理を実践する上で欠かせない、職場環境の改善や維持を目的とした5つの要素です。
ローマ字で書くと、すべての頭文字が「S」であることからこう呼ばれています。
・【整理】
必要なものとそうでないものが混在して散らかっていると、時間のロスや作業ミスを招いてしまいます。
定期的に不要なものを処分し、作業場をすっきりさせることで、ミスを防ぎつつ効率的に業務を遂行できます。
・【整頓】
整頓とは、現場で扱うものを取りやすい場所に配置したり並べたりすることです。単にきれいに並べるのではなく、用途や工程別に分類したり、手に取りやすい位置や高さに置いたりするなどの工夫が必要です。整理と整頓を合わせることで、効率性をより高められます。
・【清掃】
工場の床や設備が汚れていたり、ほこりが溜まっていたりすると、設備の故障や事故を招きかねません。設備の故障や事故は、業務効率の低下や不良品・不適合品の発生にもつながるため、工場内は清掃によって清潔な状態を保つことが重要です。
「整理・整頓・清掃」は、3つまとめて「3S」とも呼ばれています。これは、常に清掃されている現場は、整理・整頓しやすいことを表しています。
・【清潔】
規格を満たす製品を製造するには、現場を清潔に保つことが欠かせません。
誰が見てもわかるように表示などを統一し、整理・整頓しやすくすることも清潔の作業に含まれます。
「整理・整頓・清掃」に清潔を加えた4つをまとめて「4S」とも表現されます。特に精密機械を扱う工場や食品を扱う工場、医療関係では、製品の安全性を担保するためにも、現場の清潔性を厳しく管理されます。
・【しつけ】
しつけとは、適切な品質の製品を製造できるように、現場でのルールを設け、それが遵守される状態を習慣づけることを指します。
せっかくルールや環境を整えても、適切に活用できるかどうかは従業員次第です。
整理・整頓・清掃・清潔が維持され、製品の品質を適切に保つためには、従業員への教育やコミュニケーションも重要です。
5Sの要素は相互に関連し合っているため、どれが欠けても品質低下につながる可能性があります。
日頃から従業員一人ひとりが、5Sを意識しながら主体的に行動することにより、ミスや事故を防げる上、製品の品質も維持できます。
4M
4Mとは、製造業において品質管理や課題解決に必要とされる4つの要素です。
5Sと同様、すべての頭文字が「M」であることからこう呼ばれています。
・【Man(人)】
Manは、現場の従業員のことを指します。いくら高機能な設備をそろえても、最終的に動かすのは人であるため、各業務に応じた能力や技術が必要です。品質管理では、管理側による各従業員の適性を把握した上での適材適所が求められます。
・【Machine(設備)】
製造業では、さまざまな機械や設備を扱います。
これらが正確に稼働するためには、定期的に点検やメンテナンスを行ったり、最新の技術を必要に応じて導入したりすることが大切です。
・【Method(方法)】
品質管理におけるMethodとは、製造方法やプロセスを指します。これらを無駄なく正確に進めるためには、マニュアルの整備と製造プロセスの標準化が必要です。定められた手順を遵守することで、品質のばらつきを防げます。
・【Material(材料・製品)】
Materialとは、製品に使用される材料や原料、部品や中間工業品などを指します。
品質管理では、これらも基準や規格に適合しているかどうかを確認しなければなりません。
また、調達先や調達量が不安定だと、品質にばらつきが生じる可能性があるため、安定した調達を行えるように努めることも大切です。
製造プロセスや完成品の異常や不良が発生した場合は、上記の4Mに基づいて原因を考える手法「4M分析」を活用できます。
普段から4Mを適切に意識・管理しておくことで、異常や不良の発生時に原因を特定しやすくなります。
工場の品質管理に役立つ資格

工場の品質管理には、「QC検定」や「信頼性技術者資格認定制度(JCRE)」などの資格が役立ちます。
資格の取得は、転職活動のアピール材料になるほか、スキルアップへの足がかりとなり、年収アップにもつながります。
QC検定
QC検定の「QC」は、前述した「Quality Control」の頭文字から取っており、品質管理の知識を問う試験です。
日本品質管理協会が実施しており、求人の応募条件としてこの資格を挙げる企業が多く見受けられるほど、信頼度の高い民間資格です。
基礎知識が問われる4級から、指導者やリーダー候補者向きの1級まで、4つのレベルに分かれています。
転職活動に役立てたいのであれば、3級以上の取得がおすすめです。
QC7つ道具など、品質管理に関する知識が幅広く問われるため、製造プロセスの安定化や不良率の低減などに有効です。
また、品質管理や技術職でリーダーを目指す方にとって、1級や2級は一つの目安となる資格です。
高度な知識や実務スキルを持っていることのアピールにもつながります。
QC検定の詳細については、以下の関連記事もご覧ください。
▼関連記事
「品質管理の試験「QC検定」とは? 試験日程・合格率・メリットなどを紹介」
信頼性技術者資格認定制度(JCRE)
信頼性技術者資格認定制度(JCRE)とは、一般財団法人日本科学技術連盟が実施しており、主に品質管理や品質保証部門の人材、同部門への就職を希望する学生などを対象にしています。
初級・中級・上級の3つに分かれており、初級以外を受験するには、下位レベルの級に合格していることが前提です。
中級・上級の試験では所定の実務経験に加え、レポートや論文の提出、書類審査、面接審査により合否が判断されます。
また、信頼性工学の専門知識が求められる中級や上級を取得することで、製品の信頼性評価や寿命予測などに活用できます。
さらに、課題解決や信頼性の向上活動を主体的に行える能力が備わっていると、企業へのアピールに効果的です。
信頼性技術者資格認定制度の詳細については、以下の関連記事もご覧ください。
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この記事の寄稿者
工場の品質管理は、「工程管理」「品質検証」「品質改善」の3要素で構成されています。不良品や不適合品を減らし、製品の品質を維持するには、「5S」や「4M」などの手法を活用しながら、プロセスの管理や検査、課題解決、品質改善を継続的に行うことが重要です。また、品質管理への転職には、QC検定などの資格を取得することも有効です。
- 藤田睦貴