光学設計とは?知っておきたい基礎知識や仕事内容、必要なスキルなどを解説
カメラやディスプレイ、コピー機など、私たちの周囲にある多くの製品は光学技術によって支えられています。
光学設計は、こうした光学機器の設計を担う上流工程の仕事です。
本記事では、光学設計の基礎知識から仕事内容、必要なスキル、年収や将来性まで、詳しく解説します。
光学設計エンジニアへの転職を考えている方は参考にしてください。
光学設計とは?

光学設計とは、レンズ・ミラー・プリズム・光源などの光学部品を組み合わせ、光の性質を制御・活用した「光学機器」を設計することを指します。広義には、光学設計を専門とする技術者や、技術分野そのものを指す場合もあり、こうした技術者は光学設計エンジニアなどと呼ばれます。
光学機器の具体例は、デジタルカメラや望遠鏡、顕微鏡、照明器具、光通信装置(光ファイバー)、複合機、レーザー加工機など多岐にわたります。対象とする機器の用途や構造によって、必要となる設計手法や評価基準は大きく異なるため、光学設計には高度な専門知識と幅広い応用力が求められます。
知っておきたい光学設計の基礎知識

光学設計(光学機器)にはさまざまな種類がありますが、原理的には「結像系光学設計」と「集光・投光系光学設計」の2つに大別されます。前者は光を像として形作る技術、後者は光を目的の方向に制御・投射する技術です。ここではそれぞれについて詳しく解説します。
結像系光学設計
結像系光学設計とは、物体から放たれた光をレンズなどで集束させ、撮像素子やフィルム上に鮮明な像を形成するための設計技術です。
カメラ、顕微鏡、望遠鏡など、「像を形成する」光学機器に広く用いられています。
設計では、焦点距離・解像度・コントラスト・歪みの抑制などが主要な評価指標です。
複数の凸レンズと凹レンズを組み合わせて光の収差を補正し、理想的な結像性能を実現することが設計者の腕の見せどころでもあります。
また、受光面の構成も機器によって異なり、デジタルカメラでは撮像素子、顕微鏡や望遠鏡では人間の網膜がその役割を担います。
集光・投光系光学設計
集光・投光系光学設計は、光源から発せられた光を特定の方向に集めたり、均一に拡散させたりする光学系を設計する技術です。
LED照明や自動車のヘッドライト、プロジェクター、レーザー装置など、光の明るさや指向性を精密に制御する必要がある製品に用いられます。
設計時の主要な評価指標は、照度分布の均一性、集光効率、照射範囲などです。
光源の位置や形状、レンズや反射面の配置を最適化することで、必要な場所に必要な光を、無駄なく正確に届けることを目的とします。
光学設計エンジニアの仕事内容

光学設計エンジニアは、光学機器を製品開発する際に上流工程から関わり、開発チームやクライアントの要望を満たす光学性能を具現化する役割を担います。その具体的な業務は、要件定義・基本設計・詳細設計という3つのステップで構成されています。
要件定義
要件定義は、光学設計プロジェクトの出発点となる重要な工程です。
この段階では、クライアントや開発チームからの要望をもとに、光学機器で実現すべき機能や性能を明確化し、仕様条件を設定します。
たとえば、焦点距離・F値・画角・光量・サイズなどの要求項目を整理し、コストや生産性とのバランスを考慮しながら大まかな設計方針を決定します。この工程で方向性を誤ると後工程に大きな影響を及ぼすため、要望を正確に把握するコミュニケーション能力と、それを技術仕様に落とし込む専門的な判断力の両方が求められます。
基本設計
基本設計では、要件定義で定めた仕様をもとに、レンズや光源の配置・構成を検討し、光学系の全体像を設計します。
光線追跡やシミュレーションソフトを用いて性能の実現可能性を検証し、最適な光学構成の骨格を形作る段階です。
焦点距離や画角などの主要パラメータを設定し、収差や光量分布を確認しながら設計を調整します。
また、概算コストや筐体サイズなどの制約条件も並行して検討し、実用性と性能の両立を図ります。
基本設計の内容をクライアントと共有し、承認を得たうえで、より詳細な構造設計へと進みます。
詳細設計
詳細設計では、基本設計で策定した構成をもとに、レンズ曲率・厚み・材質・配置位置などを数値レベルで具体化します。
専用の光学設計ソフトを用いてパラメータの最適化を行い、性能解析や公差解析によって量産時のばらつきを予測・補正します。
この工程は、光学理論に加えてプログラミングやデータ解析の知識も求められる高度な技術領域です。
設計が確定した後は、図面や製造仕様書を作成し、試作・評価を経て量産工程が始動します。
光学設計エンジニアの平均年収

光学設計エンジニアの年収は、およそ550〜850万円の水準にあります。
専門的な光学知識や解析スキルが求められる職種であるため、エンジニア職の中でも比較的高い水準に位置します。
「令和6年分民間給与実態統計調査」によると、日本の給与所得者全体の平均年収は約478万円です。
この数値と比較すると、光学設計エンジニアは平均を上回る収入を得られる可能性が高いです。
また、勤務先や担当業務の領域、経験年数によっては、これ以上の年収を得ることも十分可能です。
日本には光学機器分野の大手メーカーが多く、給与水準だけでなく福利厚生・研究設備・キャリア支援などの環境面も整っている傾向にある点も、この職種の大きな魅力です。
光学設計エンジニアの将来性

光学設計エンジニアは、今後も高い将来性が期待できる職種です。
日本の光学技術は、カメラやコピー機などの精密機器開発を通じて発展し、世界市場で確固たる地位を築いてきました。
現在ではその技術基盤が、スマートフォンのカメラ、医療用内視鏡、レーザー加工装置、半導体露光装置など、デジタルおよび先端分野に広く応用されています。
特に、スマートフォンカメラの高性能化や医療・バイオ分野での小型光学機器の需要拡大が進む中、光学設計エンジニアの需要は今後も増加傾向にあります。
世界的にも光学設計市場は拡大しており、日本市場でも成熟を迎えつつ、高精度化・高機能化を軸に技術革新が続いています。
さらに、AIによる画像認識や自動運転、XR(クロスリアリティ)などの先端領域においても光学技術は欠かせません。
こうした最新技術・応用技術も視野に入れて知識やスキルを高めることで、光学設計エンジニアは長期的に高い市場価値を維持し、幅広い分野で活躍できる可能性を持っています。
光学設計エンジニアに必要なスキル

光学設計エンジニアに求められるのは、単なる設計技術だけではありません。
以下では、光学設計エンジニアに必要なスキルを3つに分けて紹介します。
コミュニケーション能力
光学設計エンジニアは、一人で完結する仕事ではなく、クライアントや社内の設計・製造・品質部門など、多くの関係者と協働する必要があります。そのため、相手の要望を正確に汲み取り、専門的な内容をわかりやすく伝える高いコミュニケーション能力が不可欠です。
特にクライアントとの打ち合わせでは、コストや性能、納期など複数の条件をすり合わせながら、最適な設計方針を提案する力が求められます。また、他分野のエンジニアとの議論や、トラブル発生時の迅速な情報共有にも高い調整力が必要です。
さらに、チーム内で意見を尊重し合い、より良い成果を導くための協調性や傾聴力も不可欠です。
こうしたコミュニケーション能力は、設計品質の向上だけでなく、信頼関係の構築やプロジェクトの円滑な推進にも直結します。
課題解決能力
光学設計エンジニアには、論理的思考力と粘り強い課題解決能力が求められます。
入念に設計しても、想定どおりに製品開発が進むとは限らず、試作段階で予期せぬ収差や光量不足が発生することもあります。
そうした場合には、レンズの曲率や配置、材質などを調整しながら、要求性能を満たすための最適解を導き出す柔軟な思考が必要です。
加えて、原因を分析し、再現性を検証しながら問題をひとつずつ解消していく根気強さも求められます。
光学設計は、精密な理論と実験の積み重ねによって成り立つ分野です。
諦めずに試行錯誤を重ね、知識と経験を活かして最善の結果を追求する姿勢が、優れた設計者に求められます。
光学系に関する知識全般
光学設計エンジニアとして活躍するには、光の反射・屈折・干渉といった基礎原理を理解していることが大前提です。
さらに、 幾何光学・波動光学・フォトニクス・色彩工学といった幅広い理論を応用できる知識が求められます。
実務では、ZemaxやCode V、LightToolsといった光学設計ソフトを活用してシミュレーションを行い、設計を最適化するスキルも必要です。また、コーティングや迷光対策、分光特性などの実装知識も、製品品質を左右する要素となります。
近年では、PythonやC++を用いた自動設計・解析のプログラミング技術にも注目が集まっています。
AIによる画像解析やデータ処理など、光学分野に隣接する技術を習得している人材は、より高く評価される傾向にあります。
総じて、ものづくりへの関心が高く、光学系の知識を継続的に学ぶ姿勢が、キャリア成長のカギとなります。
知識やスキルを深め、自身の市場価値を高めるためには関連資格の取得も効果的です。
光学設計エンジニアにおすすめの資格「光学機器製造技能士」

光学設計エンジニアとして専門性を高めたい方には、国家資格である「光学機器製造技能士」の取得がおすすめです。
この資格は厚生労働省が定める技能検定制度のひとつで、光学機器の製造に必要な知識と技能を客観的に証明できるものとなります。
試験問題は中央職業能力開発協会が作成し、実施は各都道府県の職業能力開発協会が担当します。
「光学機器製造技能士」には、「光学ガラス研磨作業」と「光学機器組立て作業」の2区分があり、「学科試験」と「実技試験」の両面から評価されます。
「光学ガラス研磨作業」では、レンズやプリズムの研磨・みがき・仕上げといった加工技術に加え、光学一般、品質管理、安全衛生などの知識が問われます。一方、「光学機器組立て作業」では、レンズやミラーなどを精密に組み立て、光軸の調整を行う技能が評価されます。
等級は1級と2級の2段階で構成されており、1級は複雑かつ高精度な作業を行う上級レベル、2級は基本的な作業を遂行できる中級レベルです。いずれも等級に応じた実務経験が必要なため、まずは現場で経験を積みながら資格取得を目指すのが一般的です。
また「光学機器製造技能士」以外にも、光学設計や光技術の知識を体系的に学べる「光検定(国際光技術者検定)」などの資格があります。光学設計は多岐にわたる分野で活用されているため、応用分野の資格を取るのもおすすめです。
資格勉強・資格取得を通して、自身のスキルや市場価値を高められます。
光学設計エンジニアへの転職ならメイテックネクスト

光学設計エンジニアとして転職を検討している方には弊社「メイテックネクスト」の利用もおすすめです。
弊社は、エンジニア分野に特化した転職エージェントとして豊富な実績を持ち、これまでに多くの技術者のキャリアアップを支援してきました。以下では、その転職成功事例を紹介します。
光学設計エンジニアの転職成功事例
【転職成功事例】
<家庭用照明の光学エンジニアから自動車用ヘッドライトの光学エンジニアへ>
33歳現年収550万円から650万円へ年収アップ
【転職成功事例】
<自動運転に必要なLiDAR技術経験者から半導体後工程製造装置メーカーの開発職へ>
30歳現年収750万円から1050万円へ年収アップ
【転職成功事例】
<自動車ヘッドライト光学エンジニアから防衛向けレーダー開発職へ>
28歳現年収500万円から560万円へ年収アップ
エージェントからのアドバイス
光学設計エンジニアの転職市場は、ここ数年で大きく広がりを見せています。
防衛業界のレーダー・光学技術、自動車業界の自動運転・路面描画・アンビエントライト分野、さらに医療機器の高度化や自動診断技術など、光学技術の応用範囲は拡大しています。
そのため、光学設計から量産化・品質管理に至るまで、技術職の採用は活況です。
一方で、企業が求める人材像はより即戦力重視へシフトしています。
以前は「集光技術」「拡散技術」はいずれも光学として採用検討頂けるケースもありましたが、現在はより技術的なマッチ度が高い方の採用へ舵を切られています。
特に集光技術の経験者のニーズはより高くなっています。
転職が決まりやすい方の傾向として、技術的には集光技術つまりレーザー技術へ転用できる方、人物的には主体性とこだわりを持って業務に取り組む方が高く評価される傾向にあります。
また、自動車業界から防衛・航空業界、半導体業界から自動車分野など、異業界へのキャリアチェンジが増加しているのも特徴です。
特に今、レーザー・レーダー領域の経験者は引く手あまたです。
また光学技術を有しと自動車業界の経験を持つ方も高い評価を得やすい状況です。
面接では、技術スキルだけでなく、会社や事業部の風土との相性を重視する傾向が強まっています。
応募者の志向や転職理由が、入社後にどの程度解消されるかまでを確認する企業も多く、
単にスキルをアピールするだけでなく、「なぜその企業で働きたいのか」を自分の言葉で語れる準備が大切です。
また、今後に向けては、最先端技術や高品質化が求められる中で、長寿命・長期信頼性を意識した設計力を磨くことがポイントとなります。
さらに、今後のキャリアを考えるうえでおすすめしたいのが、次の3点です。
・自身の光学技術がどの領域まで広がる可能性を持つかのマーケット感を、特許や学術論文などから把握すること
・光学だけでなく機械構造・電気・ソフトといった他分野の知識を取り入れ、製品開発力を高めること
・量産化や発注先との対話を通じて、市場が求めるものと製品化のギャップを理解すること
これらを意識して日々の業務に取り組むことで、市場価値を大きく高めることができます。
光学設計エンジニアとしての専門性を軸に、視野を広げてキャリアの可能性を広げていきましょう。
光学設計エンジニアのよくある質問

最後に、光学設計に関してよくある質問についてお答えします。
光学機器とは何ですか?
光学機器とは、光の性質やその作用(反射・屈折・干渉・回折など)を利用した機器全般を指します。
基本的な構成要素はレンズ、ミラー、プリズムなどで、光を制御して像を結んだり照射したりすることで成立しているのが特徴です。
代表的な光学機器には、カメラ・眼鏡・顕微鏡・望遠鏡・プロジェクター・複合機などがあります。
さらに、医療分野では内視鏡やレーザー手術装置、産業分野では半導体製造装置や測量機器などにも光学技術が広く応用されています。
光学メーカーで大手はどこですか?
日本の光学メーカーは、もともとカメラやコピー機などの精密機器開発を通じて世界的な競争力を築いた大手企業が多く、現在もその技術力でグローバル市場をリードしています。
代表的な光学メーカーとしては、ニコン、キヤノン、富士フイルムなどが挙げられます。
これらはカメラや映像機器だけでなく、医療用光学機器や半導体露光装置、産業用センサーなど幅広い分野で製品を展開しています。
また、レンズ製造や光学部品に特化したメーカーとして、タムロン、HOYA、シグマなども世界的に高い評価を得ています。
メイテックネクストでは、これら光学関連の大手・優良メーカーへの転職支援実績も多数あり、専門知識を活かしたキャリア形成をサポートしています。
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この記事の寄稿者
光学設計は、カメラやレーザーなど光を活用した機器の設計を行う仕事です。
光学技術の応用範囲は拡大するなかで需要は高まっており、従事するエンジニアの将来性も期待できます。
光学設計エンジニアへの転職を検討している方は、エンジニアの転職に特化した支援サービス「メイテックネクスト」をぜひご利用ください。

- 中森陽太