
工場の設備保全はきつい?理由や向いている人なども解説
製造分野は学歴不問で未経験可の求人も多い一方、生産設備や工作機械などの設備保全がきついという声もあります。
そのためメーカーや工場の仕事に関心があるものの、転職に踏み切れない人も少なくありません。
本記事では設備保全がきついといわれる理由について解説するとともに、向いている人の特徴や転職成功事例などを紹介します。
工場の設備保全がきついといわれる理由

設備保全とは、生産設備や機械が安定して稼働するよう、設備内の各種装置、工作機械の定期点検や安全装置の確認、機械の不調・故障発生時の復旧を行います。
この設備保全の仕事がきついといわれる理由として、以下の5つが挙げられます。
人手不足による影響で忙しい
設備保全がきついといわれる要因のひとつは、人手不足による業務負荷の高さです。
日本では少子高齢化の影響で国内の生産年齢人口が減少し続けており、さまざまな産業で人手不足が深刻化しています。
このような背景から製造業でも人材確保に苦慮する企業も少なくなく、従業員一人あたりの業務負荷が高くなる場合もあります。
特に設備保全は工場の稼働継続に大きく関わる業務であり、担当者には大きな責任がともなうことから精神的な負担も少なくありません。
また、24時間体制で稼働する大規模な工場の生産設備の場合、交替制勤務が採用されていることが一般的です。
生活リズムが不規則になりがちで、心身の健康に悪影響をおよぼす可能性があることも人手不足の一因と考えられます。
イレギュラー対応や夜勤が発生する
設備保全が敬遠される理由として挙げられるのが、突発的な対応を求められる点です。
たとえば、金属加工の工場で使用されるプレス機が突然停止した場合、製造ライン全体が停止し、生産計画に大きな支障をきたします。
そのため、設備保全の担当者は機械の不具合を迅速に復旧し、速やかに製造ラインを再開しなくてはなりません。
このような緊急事態が発生した場合、設備保全の担当者は夜間や休日など通常の勤務時間外であっても対応を求められる場合があります。
不規則な勤務形態や夜勤で休息やプライベートの時間を十分に確保できない恐れがあるため、心身の負担が大きく健康面の問題も生じかねません。
このことも設備保全がきついとされる理由のひとつです。
仕事が単調である
特にトラブルなどが発生していない場合、特定の作業を繰り返し行う場合が多く、毎日の業務に大きな変化はありません。
システムや機械のチェックと設定・調整、オイルや潤滑油の補充、外装やフィルターの清掃など、ルーティン化された作業をスケジュール通りに実行するのが基本的な業務となります。
機械の故障や不具合などのイレギュラー対応が求められるケースもあるものの、基本的には点検や補充、修理といった地道な作業の繰り返しです。
ルーティンワークが中心で変化が少ないため、人によっては飽きが生じやすい場合があります。
また、定型化された作業を特定の手順に従って行うという性質上、自己成長やスキルアップを実感しにくいという声もあります 。
生産設備が高度化しておりキャッチアップが必要
設備保全がきついとされる理由のひとつは、新たな知識や技術を継続的に学ぶ必要がある点です。
製造分野ではDXの推進が重要課題となっており、AIやIoT、ロボティクスなどのデジタル技術を活用した工場のスマート化が加速しています。
そのため、設備保全の担当者は従来の修理や点検作業に加え、先進的なデジタル技術に対応できるスキルも習得しなくてはなりません。
近年の設備保全では事後保全だけでなく、不具合の兆候を事前に察知する予知保全も重要視されており、AIやIoTのさらなる活用も期待されています。
しかし、これらの技術は目覚ましい進歩が続けていることから、生産設備のメンテナンスやトラブルシューティングに必要な知識やスキルも工場のスマート化にともない高度化すると考えられます。
不規則な勤務形態と毎日の設備保全に関する業務をこなすなかで、新たな知識や技術を継続的に習得するのは容易なことではありません。
このような負担が大きいことは、設備保全が敬遠される一因となっています。
危険がともなう作業もある
危険度が高い作業を行う場合があることも、工場の設備保全が敬遠される要因のひとつです。
たとえば、電気事業法第42条(※1)では高圧受電設備の設置者に対し、定期点検などを含む保安規定の策定を義務付けています。
この高圧受電設備の点検は多大な危険をともなう作業であり、安全対策が不十分であったために作業員が高圧充電部に接触する事故のように、重大な労働災害が発生するケースもあります。
(※1)参照:e-Gov 法令検索|電気事業法
きついだけじゃない!設備保全の仕事のやりがい

このように工場の設備保全は敬遠される側面があります。
しかしその一方で、設備保全には大きなやりがいがあるという声もあります。
設備保全の担当者は、生産ライン全体の安定稼働を支える重要な役割を担い、企業の事業継続や製品品質の維持において欠かせない存在です。
自分の仕事が工場全体を支えているという手応えが、大きな魅力となっているのです。
また、機械保全技能士や電気工事士、電気主任技術者といった資格を取得することで、対応できる業務の幅が広がり、より高度な設備にも携われるようになります。
専門性の向上は、やりがいや貢献度を高めるだけでなく、給与や待遇の改善にもつながり、長期的なキャリア形成にも有利に働きます。
さらに、設備保全の実務経験を積み重ねていけば、全体の保全計画の策定や工場全体の改善提案といった、より上流の業務にも関われるようになります。
こうした成長を経て、マネジメント職やエンジニアリング領域へのキャリアアップを目指すことも可能です。
このように、設備保全は現場での地道な努力が、確かなスキルやキャリアの構築へとつながる仕事です。
努力次第で自身の市場価値を高め、将来的にはより広いフィールドでの活躍も期待できる点も、大きなメリットといえるでしょう。
設備保全の平均年収は高い傾向にある

工場の設備保全は経験年数や職場によって幅があるものの、民間平均を上回るケースも多く、将来的にも安定した需要が期待できる職種です。
設備保全に関わる職種の平均年収は300万円〜800万円が一般的な相場であり、たとえば「自社生産ラインの設備保全」では480万円〜790万円、「車製造領域における予防保全」では450万円〜1,000万円が平均年収の目安となります。
国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査結果について(※2)」によると、令和5年における日本の民間企業の平均給与は460万円であることから、工場の設備保全は平均よりも高い水準の収入が期待できる職種と考えられます。
また、製造分野は人手不足や就業者の高齢化といった課題を抱えているものの、日本のGDPの約2割を占める基幹産業であり、今後も安定的な需要が見込まれるという魅力もあります。
設備保全のやりがいや年収の詳細は以下の記事をご覧ください。
▼関連記事:
「設備保全のやりがいとは?業務内容や気になる年収について解説!」
きつさは企業による差が大きい

工場の設備保全はきついという声も少なくありませんが、その業務負荷は企業によって大きく異なります。
たとえば人員配置に余裕があり、適切な交替勤務体制や休暇取得制度が整備されている企業では、急な対応や長時間勤務の負担が軽減され、心身への負荷も比較的少ない傾向にあります。
また、近年ではAIやIoTによる予知保全の取り組みが進んでいる工場もあり、こうした先進的な現場では突発的なトラブル対応の頻度が減少しているケースも見られます。
どのような職種でも業務負荷は企業によって異なるため、入社前に労働環境や人材の充実度などを確認することが重要です。
転職を検討している企業の内情をしっかりと調査・把握したい場合は、企業に詳しい転職エージェントの活用を検討しましょう。
工場の設備保全が向いている人の特徴

どの職種にも人によって向き不向きがあり、仕事がきついと感じるかどうかも本人の性格や特性、個人の能力などによって異なります。
工場の設備保全に向いている人に多く見られる特徴として挙げられるのが以下の5つです。
責任感が強い人
設備保全の担当者に求められる特性のひとつとして、責任感の高さが挙げられます。
工作機械や電子機器などに不具合が発生した場合、製造ラインが停止し、企業の生産活動そのものが滞ります。
そのため、設備保全には保全業務の事業活動における意義の理解や、事前の点検や修理を怠らない責任感の高さが必要です。
また、突発的な故障や不具合の発生時でも冷静に状況を分析し最適な対応を選択する判断力と、業務を最後まで丁寧にやり遂げる意識の高さも求められます。
注意力・集中力が高い人
わずかな変化に気づける注意力と細かい作業に没頭できる集中力も、設備保全の担当者に求められる能力として挙げられます。
生産設備の定期的な点検やメンテナンスでは、微細な異常や兆候を見逃さずに捉える能力が必要です。
また、不具合を検知した場合は適切な修理や調整を行うために、周囲の安全に配慮しつつ集中して作業に取り組まなくてはなりません。
この注意力と集中力は設備保全の担当者に欠かせないスキルです。
サポート業務が得意な人
設備保全の担当者は他のチームや部署と連携を取る場面も少なくありません。
たとえば生産設備の異常を検知した場合、必要な道具、人員などを手配するとともに、設備のオペレータとの連携や生産部門との調整が必要になるケースがあります。
このような場面では、臨機応変な対応力やコミュニケーション能力が欠かせません。
そのため、チームワークを重視するとともに、状況に応じて柔軟に周囲をサポートできる人が設備保全に向いています。
図面・マニュアルを正確に読める人
設備保全の業務では、構造図や配線図、マニュアル類から必要な情報を正確に読み取る力が求められます。
設備の構造や仕様を図面から理解し、適切な部品の特定や作業手順を把握することが欠かせません。
また、手順書に沿って正確に作業を進めるためにも、記載内容を漏れなく理解できる読解力が必要です。
このため、図や文書から情報を正確に引き出し、現場作業に落とし込める力は、設備保全において重要なスキルの一つです。
設計や設備に関する知識を持っている人
設備保全の業務に携わるには、機械や電気に関する基礎知識や、設備の仕組み・動作原理への理解が不可欠です。
これらは、生産ライン全体を安定して稼働させていくための前提となるものです。
そのうえで、故障や不具合の原因を迅速に特定し、適切な対処法を考えられる人は、設備保全の仕事により強く向いているといえます。
工作機械や駆動装置などの基本構造を理解していれば、異常が発生した際にも冷静に原因を絞り込み、速やかに修復対応を行い、工場の安定稼働を支えることができます。
工場の設備保全に役立つ資格

工場の設備保全は専門的な知識と技術を求められる業務です。
保全業務に関連する資格を取得できれば、一定レベルのスキルを有する証明となり、就職や転職、キャリアアップなどで有利に働きます。
機械保全技能士
機械保全技能士は、製造現場で稼働する機械の保全に関する専門的な知識や技術を有することを証明できる国家資格であり、学科試験と実技試験で構成される機械保全技能士検定に合格することで取得できます。
機能保全技能士検定には「3級」「2級」「1級」「特級」の区分があり、上位の資格になるほど複雑な設備や高度な技術に対応できる知識とスキルを持つ証となります。
機械保全技能士は設備保全の職種に就くのに取得必須というわけではありませんが、資格に関する勉強をすることで機械の保全に求められる知識やスキルの習得・再確認も可能です。
設備保全の業務に初めて携わる人や、設備保全への転職を検討している人は、3級から取得を目指すことをおすすめします。
電気工事士1種・2種
電気工事士は、電気設備の工事や取り扱いに関連する国家資格です。
電気工事士には第一種と第二種があり、それぞれの区分で従事できる工事の範囲と難易度が異なります。
第二種電気工事士は一般住宅や小規模施設などにおいて、600V以下で受電する一般用電気工作物の工事やメンテナンスを行えます。
第一種電気工事士は第二種の対応範囲に加えて、工場やビル、大型商業施設などにおいて、500kW未満で受電する電気設備の工事や取り扱いができる資格です。
電気工事士の資格も設備保全に必須というわけではありません。
しかし、電気工事士の資格があれば電気系統の保全や配線などの電気設備の工事を行えるため、設備保全の業務に役立ちます。
第一種の取得には実務経験が必要になるため、初心者は第二種の取得を通して電気設備に関する理解を深めることをおすすめします。
電気主任技術者
電気主任技術者は、電気設備の保安や監督に必要となる国家資格です。
電気事業法第43条(※3)では、一定規模以上の電気工作物を設置する場合、事業者に対しその設備の保安・監督を行う電気主任技術者の選任を義務付けています。
とくに高圧電気設備を使用する工場では極めて重要な役割を担うことになるため、社会的な評価も期待できます。
電気主任技術者の資格は第三種、第二種、第一種の3つの区分があり、それぞれで維持・保安の監督が可能な電気設備の規模が異なります。
設備保全の仕事への転職を検討している人は、取り扱い可能な電気設備の規模が最も小さい第三種の取得からスタートし、実務と経験を重ねながらステップアップを目指しましょう。
(※3)参照:e-Gov 法令検索|電気事業法
工場の設備保全への転職なら「メイテックネクスト」

メイテックネクストはエンジニアの転職に特化した転職エージェントです。
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設備保全に関連する業種・業界への転職成功事例を解説するとともに、貴方様のご志向に合ったキャリアパスや求人をご提案させて頂きます。
この記事の寄稿者
人手不足やイレギュラー対応、キャッチアップが必要などの理由から、設備保全の仕事はきついといわれがちです。
しかし、収入面・やりがいの面で魅力的な職種でもあるため、自身の適性を考慮して資格取得や就職・転職を考えてみましょう。
設備保全に関連する業種・業界への転職を検討している方は弊社メイテックネクストへご相談ください。
- 幡多秀駿