電気主任技術者とは?資格や合格率、仕事内容まで解説
製造業やプラント、再生可能エネルギー発電所など、高圧や特別高圧の電気設備を扱う現場では、国家資格である「電気主任技術者」の選任が法律で義務付けられています。
本記事では、電気主任技術者の資格取得と転職を検討している方に向けて、電気主任技術者の資格概要から、仕事内容、将来性、活躍できる業界について解説します。
電気主任技術者とは

電気主任技術者は、国家資格であり、電気事業法に基づいて定められた「事業用電気工作物」に対する保安監督を担う技術者です。
具体的には、工場やプラント、再生可能エネルギー発電所、変電所・送配電設備といった、高圧もしくは特別高圧で受電している設備を持つ事業場において、電気主任技術者の選任が必須とされています。
電気主任技術者は、製造業の設備保全や生産設備の安定稼働を支える「技術監督のトップ」としての役割を果たします。
電気主任技術者の役割
電気主任技術者は、受変電設備や配電設備、電気工作物に関連して重大事故(感電、火災、停電など)を防止するための業務を遂行します。万が一トラブルが発生した際には、原因究明や再発防止策の立案、改善指導などを行います。
例えば、製造業の工場で電気設備が停止した場合、「生産停止」「納期遅延」「多額の損失」といった経営的インパクトが発生しかねません。電気主任技術者には、リスクを最小限に抑える責任があります。
電気主任技術者の種類(第一種・第二種・第三種)
電気主任技術者の資格には、種別があり、その種別によって扱える電圧や設備規模、活躍のフィールドが変わります。
第一種電気主任技術者(電験一種)は、特別高圧(154 kV など)を含む大規模設備や発電所、変電所の保安監督を行える電気主任技術者の最上位資格です。資格保有者は、大規模プラントや高圧受電設備を多数持つ製造業で活躍しており、年収・キャリアともに優位性があります。
第二種電気主任技術者(電験二種)は、高圧(17万ボルト未満)まで対応できるポジションです。主に製造業の工場、再エネ発電所、大規模ビルなどで活躍しています。製造業の場合、実務で採用されるケースが多く、転職市場でも価値の高い資格とされています。
第三種電気主任技術者(電験三種)は、高圧・低圧を含む比較的小規模の電気設備(50 kV未満など)に対応できる資格です。
中小工場や事務所ビル、商業施設などで活躍できます。合格は容易ではないものの、ハードルは相対的に低めです。
種別が上がるほど「扱える設備規模」「責任範囲」「キャリアの可能性」が広がるだけではなく、「年収水準」も高くなる傾向があります。
第二種以上の資格保有者は、製造業やプラント設備保全分野での転職や条件交渉が有利になります。
電気主任技術者試験の概要

電気主任技術者試験(電験)は、電気事業法に基づく国家資格であり、第一種・第二種・第三種に分かれています。
種別によって扱える電圧や設備規模が異なり、合格には電気理論、電力、機械、法規の広範な知識が求められます。
受験資格・方法
第一種〜第三種まで共通して、理論、電力、機械、法規の4科目で構成された一次試験が行われます。
ただし、第一種・第二種が二次試験まであるのに対し、第三種は一次試験のみです。
近年、第三種では、CBT方式(コンピュータ試験)が導入されており、受験日程も上期・下期と年2回に増加しています。
これにより、以前より受験しやすく、計画的に挑戦しやすい試験となりました。
試験科目
試験科目は以下のとおりです。
【第三種(一次試験のみ、4科目)】
・理論(電気回路、電磁気など)
・電力(発電、送電、変電、配電など)
・機械(電動機、パワエレ、電気機器)
・法規(電気事業法、技術基準など)
4科目すべてに合格すると資格を取得できます。なお、第三種では科目合格制度が設けられています。合格科目は3年間有効です。
【第二種・第一種(一次+二次)】
■一次試験(共通)
・理論
・電力
・機械
・法規
第三種に比べ、理解を問われる深度と範囲が広くなります。
■二次試験(記述式)
・電力、管理
・電気計算
電気計算は、記述・論述形式で行われ、発電所、変電所、送電線、電力系統解析など、より実務に近い知識が必要です。
合格率
電気主任技術者試験は、理系資格の中でも屈指の難関と言われる資格です。
電気技術者試験センターが公表しているデータを見てみると、2024年の合格率は以下のようになっています。
・第一種:約15.6%
・第二種:約18.9%
・第三種:約16.4%
第三種には科目合格制度があるため、一度に全科目を合格できなくでも計画的に資格取得を目指せます。
一方、一種・二種は二次試験も含めて総合力が問われるため、十分な対策が必要です。
勉強方法
電気主任技術者試験の勉強は長期戦です。特に一種・二種は大学レベルの電気工学の深い理解が必要であり、体系的な学習が必要です。
必要な勉強時間の目安は以下のようになっています。
・第三種:300〜600時間
・第二種:700〜1,000時間
・第一種:1,000〜1,500時間以上
電気主任技術者の勉強方法は、主に以下のようなものがあります。
電験二種・一種は受験者数が少ないため、三種に比べ、通信講座や市販のテキストなどは少なくなっています。
・書店で販売されているテキストや問題集で学ぶ
・計算問題を中心に反復学習
・過去問題の演習
・通信講座やオンライン講座で学ぶ
試験合格後に行う手続き
電気主任技術者試験の合格後は、免状交付申請を行います。免状は申請制であり、合格しても自動で交付されません。
免状の取得は法的義務ではないものの、実務では免状を持っていることが必須となるケースが多くあります。
電気主任技術者の仕事内容

電気主任技術者の主な業務は「電気設備の保安と監督」です。実務でどのような役割を担うのかを紹介します。
電気設備の保安・監督
受変電設備を中心とした電気工作物の保安監督を担います。主な対象は、以下のような設備です。
・高圧受変電設備(6.6kV)
・特別高圧受変電設備(22kV、66kV、154kVなど)
設備が故障すると、工場全体がブラックアウトする可能性もあるため、監督業務は極めて重要です。
具体的な業務内容は、以下のとおりです。
・点検計画の立案
・停電作業の調整(年次点検、月次点検)
・作業手順書や安全対策書の作成
・外部業者との折衝
・電気事業法や技術基準に沿った保安監督
特に、停電作業は生産ラインへの影響が大きく、工場では年に数回しか実施できないケースもあります。
電気設備の点検・保守業務
点検の内容は「工場」「プラント」「商業施設」など設備の性質によって大きく異なります。
しかし、高圧設備の点検は、どの業界でも必ず必要になる業務で、保安監督業務の中心部分となります。下記のような業務があります。
・定期点検
・日常点検
・故障予兆管理(予防保全)
・点検結果の記録や報告書の作成
保安規程の作成・運用
電気事業法第42条に基づき、事業者は保安規程を定める義務があります。
電気主任技術者は、その作成や更新、遵守状況の管理を担当します。
・電気工作物の保安体制
・点検・保守の基準と方法
・緊急時の対応手順
・事故報告フロー
・教育計画や安全管理体制
事業場の設備変更や法改正があるたびに規程を更新し、現場への教育も行います。
電気事故・トラブルへの対応
電気主任技術者は、電気事故やトラブル発生時の原因究明や復旧対応、再発防止策のすべてを統括します。
対応が必要とされる主なトラブルとしては、停電、機器故障といった日常的なものから、雷害や落雷による過電圧事故、ケーブルの地絡や短絡、そして盤内での発煙や発火といった重大な事故に繋がる可能性のある事象が挙げられます。これらのトラブルに対し、電気主任技術者は以下のような役割を担います。
・異常発生時の原因調査
・停電復旧に向けた切り分け
・関係部署への報告
・再発防止策(設備更新、設定変更、安全ルール改善)
重大事故の場合、企業の損失は非常に大きくなるため、スピードと正確性が求められます。
安全啓発・教育業務
電気主任技術者は「現場の安全文化づくり」を担う教育者の役割も果たします。
電気事業法やJIS、社内基準に沿った安全教育を行い、設備事故や労災を防ぐための改善を進めます。
・作業員向けの感電防止教育
・KY(危険予知)活動
・過去のヒヤリハット事例の共有
・作業手順書の指導
・電気保安規程の説明
電気主任技術者の年収

電気主任技術者の年収は、資格の種別や選任経験、業界によって大きく変動します。
また、事業によっては法令上で選任が必須となるため、資格保有者の市場価値は高くなる傾向があります。
電気主任技術者の年収相場(第三種〜第一種)
一般的な年収の相場は以下の通りです。
・第三種(電験三種):400万〜650万円
・第二種(電験二種):550万〜800万円
・第一種(電験一種):700万〜1000万円
電気主任技術者の年収は選任経験で大きく変わり、第一種・第二種は求人数こそ少ないものの、扱える範囲が広く人材が希少なため、待遇は高い傾向があります。また、年齢が高くなってからの転職において、採用される可能性が高いのも特徴です。
また、35歳前後の想定年収については、以下のような傾向があります。
プラント設備保全:750万円程度
施設管理:850万円程度
プラントエンジニアリング:900万円以上
電力会社:900万円以上
資格手当・選任手当
企業によっては、資格保有者に資格手当、選任者に選任手当を支給するケースがあります。
手当の有無や金額は企業によって異なりますが、以下の傾向があります。
・第三種:5,000〜2万円
・第二種:1万〜4万円
・第一種:2万〜5万円以上
特に高圧・特高を扱う工場や大型プラントでは、企業側が必ず選任者を置かなければなりません。そのため、手当が上乗せされる傾向があります。
電気主任技術者の大変さ

電気主任技術者は、停電や火災の発生、機器が故障した際、原因究明と復旧対応に加え、再発防止策の立案まで行わなければなりません。
特に工場では、生産ライン停止が多大な損失となるため、責任の大きさにプレッシャーを感じることもあります。
また、人員不足によって、負担が大きくなりやすいことも挙げられます。電験保有者は業界全体で不足しているため、一人が広い設備を担当したり、若手が少ないことが理由でベテランの負担が増えたりするケースもあります。
夜間や休日の呼び出し対応が発生するのも、電気主任技術者の仕事の大変な部分です。
ただし、すべての会社で夜間や休日の呼び出しが起こるわけではありません。
大変さは、企業体制や設備規模によって大きく異なります。
電気主任技術者の魅力・やりがい

電気主任技術者の仕事は責任が重い分、社会や組織への貢献度が高く、大きなやりがいを見出しやすい職種です。
電気設備を動かす重要な役割を通して、「工場の生産を支える」「社会インフラを守る」といった高い使命感を持って業務に取り組めます。
設備トラブルを解決した際の達成感も大きな魅力です。特に、落雷による変圧器のトリップや工場ラインの停止といった緊急事態において、自ら原因を突き止め、設備を復旧させた経験は、確かな技術力と貢献実感につながります。
また、経験や資格がそのまま市場価値になる点も強みです。
電気主任技術者資格は国家資格の中でも市場価値が高く、転職市場で優位性があります。
エネルギー、プラント、再エネ、データセンターなど、今後も成長が見込まれる業界で活躍できることも、この仕事の大きな魅力です。
電気主任技術者の将来性

電気主任技術者は、人材不足とベテラン退職でニーズが急増しているため、今後も需要は長く続くと考えられます。
特に、第三種は若手が少ないため、20〜40代の採用が活発です。
再エネ(太陽光・風力)やEV、データセンターの設備増加も追い風になっています。
太陽光発電所や風力発電所、蓄電池設備などの施設においても、電気主任技術者は重要な役割を担います。
設備容量が大きくなるほど、選任義務が厳しくなるため、市場価値は今後さらに上昇する見込みです。
電気主任技術者が活躍する業界

電気主任技術者は、高圧・特別高圧設備を扱う企業で幅広く活躍できる職種です。
製造業(自動車・電子部品・食品・精密機器など)
製造業は、電験第三種の資格保有者も応募できる求人が多く、間口の広い領域です。
具体的には、受変電設備の運転や維持管理、生産設備の電気トラブル対応などを担います。
特に自動車や半導体、電子部品工場などでは6.6kVの高圧受電が一般的です。
そのため、電験保有者の安定的な需要があります。
プラント・化学・石油・エネルギー関連
化学プラントや精製プラント、製鉄所、発電設備などでは、特高(22kV〜154kV)を扱うケースが多いため、第二種・第一種の需要が高い領域です。特高受変電設備の保守・点検や事故対応、安全管理などを担います。
プラント業界では、電験だけでなく、電力の効率化/見える化の経験、カーボンニュートラル対応の経験が歓迎されます。
再生可能エネルギー(太陽光・風力)
太陽光・風力発電所は、近年、急拡大している領域であり、発電所の運転管理や遠隔監視の障害対応などを担う、電気主任技術者の需要が高まっています。地方勤務が多いものの、安定したニーズがあり、今後さらに市場の拡大が見込まれます。
電気主任技術者の資格が活かせる職種

電験は「保安監督」だけではなく、さまざまな職種に活かせます。
設備保全(工場・製造業)
工場や製造業における保全業務の採用において、電験三種は、電気主任技術者の選任要件として求められるケースが多いです。
具体的な業務内容としては、日々の生産設備の保守や改善、受変電設備の定期点検を実施し、トラブル発生時には迅速な復旧対応にあたります。さらに、設備の安定稼働と効率化を見据えた設備投資計画の立案にも携わり、生産技術や設備保全の要として活躍します。
プラントエンジニア
プラントエンジニアは、製鉄所や石油化学プラント、発電所といった大規模な施設で活躍する技術職です。
電気主任技術者として、主に以下の業務を担当します。
具体的には、特高設備の保全や運転管理、電気計装設備の保安管理、および設備の長寿命化を見据えた設備更新計画の立案などが挙げられます。また、万が一事故が発生した際には、その調査と再発防止策の立案といった重要な役割を担います。
この分野では、より大規模な電気工作物に対応できる電験第二種や第一種の所持者が、特に市場価値が高くなります。
加えて、事故対応や安全管理の実務経験者は、その専門性とリスク対応能力の高さから、非常に高い評価を受ける傾向にあります。
施設管理業務(ビル・商業施設・工場など)
電気主任技術者の資格は、オフィスビルや商業施設などの設備管理だけでなく、製造業の工場施設管理においても幅広く活かされます。
主な仕事内容は、受変電設備の月次や年次の点検に加え、空調や防災設備などの管理、テナント対応や外部業者との調整といった多岐にわたる業務です。また、電気事業法に基づく法令点検の管理も重要な役割の一つです。
特に高圧受電を行う工場や物流施設では、法律に基づき電気主任技術者の選任が必須とされています。
一方で、商業施設や比較的小規模なビル設備においては、電験第三種の資格保有者が十分にその管理業務を担えるケースが多く見られます。
技術責任者・保安監督者
大規模な設備を持つ企業において、電気主任技術者は組織全体の電気安全管理の指揮をとる、技術責任者や保安監督者といった役割を担うケースが多くなっています。
主な役割は、電気工作物の安全を確保するための保安規程の作成や更新、監督官庁への対応、そして事故防止の仕組みづくりを主導することです。また、外部に発注する工事計画の審査や、チームマネジメント、若手技術者への教育といったマネジメント業務も行います。
こうした仕事内容からもわかるように、技術の専門知識を活かしながら管理職としてのキャリア形成が可能です。業務の性質上、発注側の立ち位置となるため、現場での作業負荷が軽減され、残業が少なく安定した働き方ができるケースが多くなっています。
求人の動向
電気主任技術者の求人には、以下のような特徴があります。
・第三種の求人数が最も多い:製造業や施設管理、再エネなど、広い業界で募集があり、エントリーしやすい。
・第二種以上は求人数が少ないが待遇は良い:即戦力として活躍しやすく、年齢が高くても採用されやすい。
・再エネやプラント領域でニーズ増加中:太陽光や風力のO&M市場が拡大し、主任技術者の需要が伸び続けている。
・技術者の高齢化で若手〜中堅の採用が活発:20〜40代の電験ホルダーは売り手市場となっている。
・資格最優先の採用が増えている:業界未経験でも資格があれば採用されるケースが多い。
・AI普及に伴いデータセンター求人が急増:電力設備管理の求人が新たに増えており、経験者採用が加速している。
実務経験を重視する企業があるのも事実です。電気主任技術者に限らず、資格と選任経験の組み合わせにより、転職市場で有利になります。
電気主任技術者試験のQ&A

最後に、電気主任技術者試験に関してよくある質問をまとめました。
「電気主任技術者はやめとけ」と言われるのはなぜ?
その背景には、いくつかの理由があります。まず、資格試験の難易度が非常に高く、合格までに長期間の学習を要することが挙げられます。また、現場で電気設備に関する事故が発生した際、責任を持って対応することも理由のひとつと言えるでしょう。
さらに、設備のトラブル発生は、夜間や休日にも起こり得るため、緊急対応で呼び出されることもあります。
このようなことから業務負担が大きいいと感じやめとけと言われる要因となっていると考えられます。
一方で、将来性が高いこと、年収アップにつながりやすいこと、どの業界にも転職しやすいなどのメリットもあります。
電験は食いっぱぐれない資格ですか?
断言はできませんが、人材不足や高齢化などさまざまな背景から安定した需要が見込める資格です。
特に第二種・第一種は、食いっぱぐれないと言っても差し支えないレベルの市場価値があります。
電気主任技術者の転職成功事例

【転職成功事例】
<化学メーカーの設備保全から、メーカー施設管理へキャリアアップ>
32歳・現年収650万円 → 740万円へ年収アップ
化学メーカーでプロセス業務および設備保全を担当していた方の事例です。
メーカーの施設管理ポジションへ年収も約90万円アップし転職されました。
<電子部品メーカーの生産技術・設備保全から、発電設備のプラントエンジニアへ>
42歳・現年収800万円 → 920万円へ年収アップ
電子部品メーカーで電気系生産技術・設備保全を担当していた方の事例です。
発電設備を扱うプラントエンジニアかつ設備保全の担当者として年収も約120万円アップで転職されました。
エージェントからのアドバイス

電気主任技術者を取り巻く転職市場は、現在非常に活発です。
特に動きが大きいのは三つの領域で、「データセンター向けの電力管理需要増に伴う増員」、「自動車業界の自動化・電動化・EV化に伴う強電を扱う工場の増加に伴う増員」、そして「発電設備の強化にともなう電気系エンジニアリング人材の増員」です。こうした背景から、企業側の採用意欲は継続して高まっています。
採用基準にも変化が見られ、従来の「資格重視」だけでなく、近年は資格だけでなく実務経験も重視するケースが増えている印象です。
そのため、採用年齢が以前より高くなってきている傾向があります。
また生成AIの活況に合わせ、データセンター向け電力管理求人が新たに増加しており、経験者採用がさらに加速しています。
プラント業界では、電気主任技術者としての経験だけでなく、エネルギー管理士資格を有し、電気エネルギーの見える化・効率化に取り組んだ経験が求められる傾向が強まっています。カーボンニュートラルに関わる経験が歓迎要件となるケースも多く見られます。
採用が決まりやすい方にはいくつかの共通点があります。
技術面では、保安経験者がもっとも優遇される傾向です。
また自然エネルギーの電力管理経験や、電力の見える化、カーボンニュートラルと絡んだ取り組みも評価されやすくなっています。
人物面では、電力の扱いは人命に関わり、また地球環境にも関わる仕事のため、慎重さや、真面目にコツコツ業務へ取り組める姿勢が重視されます。なお、資格が優先されるケースが非常に多いため、他業界出身の方も広く受け入れられる状況です。
面接の評価ポイントにも変化があり、以前は電力管理業務の経験が中心でしたが、現在は環境貢献や社会貢献への意識、そして実際にそうした業務へ取り組んだ経験が重視されるようになっています。
今後のキャリアを考えるうえでは、第二種以上の取得が非常に重要な分岐点になります。たとえ現職で扱う電圧帯が第三種レベルであっても、第二種の資格取得を進めておくことで、将来にわたって職に困らないキャリアの基盤が築けます。
スキル面では、電力の見える化・効率化やエネルギー全体の管理スキル、カーボンニュートラルを実現するための仕組み化スキルが重要です。目指す職種によって意識すべき視点は異なります。
・プラントエンジニアリングの場合
CO₂排出をエネルギー全体としてどう捉え、仕組みや機器でどう賄うのかを考える力が問われます。
電験に加えて電気工事士や技術士資格の取得に向けた勉強も進めておくことが必要です。
・施設管理の場合
縁の下の力持ちとして、電力もカーボンニュートラルへの取り組みも「当たり前」と言われるポジションです。
転職活動を行う際にはご自身でもこの視点を持っていることが重要です。
・発電業界の場合
バイオマスや自然エネルギーなどへのスキルを広げることに加え、地域や工場の電力不安をなくすという社会貢献の意識が求められます。
・メーカーの設備保全の場合
コツコツと業務に取り組むこと、また老朽化設備が多いため予防保全の考え方が重視されます。設備更新の機会には積極的に関わり経験を積んでおくことが重要です。
なお、経済産業省の試算では2030年度に第三種で約800人、第二種で約1,000人の人材が不足するとされています。
特に第二種以上は定年後も働き続けられる非常に有用な資格です。
将来を見据え、今のうちから計画的にスキルと資格を積み上げていただくことをおすすめします。
この記事の寄稿者
電気主任技術者は、電気事業法に基づく国家資格であり、工場やプラント、再エネ発電所、データセンターなど、社会を支える設備に必須とされる存在です。責任は重いものの、社会インフラを支えるという大きなやりがいがあります。
製造業でのキャリアアップ、新たな分野への挑戦、安定した技術職としての人生設計など、幅広い将来像を描けます。

- 幡多秀駿