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制御設計とは?仕事内容から年収・スキル・向いている人まで解説

制御設計とは?仕事内容から年収・スキル・向いている人まで解説

工場の自動化やDXが加速する近年、制御設計の需要が高まっています。

機械系の制御設計は、機械を意図したとおりに正確かつ安全に動かすための仕事です。

本記事では、制御設計への転職を検討している方に向けて、仕事内容、必要なスキル、やりがい、年収の相場や将来性について詳しく解説します。

制御設計とは?

制御設計とは?

制御設計とは、機械や装置を意図したとおりに、安全かつ効率的にどう動かすかを考え、その目標を実現するために、PLC(Programmable Logic Controller:プログラマブル・ロジック・コントローラ)やマイコン(マイクロコントローラ)などを用いて、装置の動作手順や制御ロジックを設計・構築する仕事です。

なお、PLCはシーケンサとも呼ばれています。

制御設計における機械系(機構)、電気系(回路)、ソフト系(組込み)の境界は、技術の進化とシステムの複雑化により、相互で深い関わりを持つようになっています。

制御設計の具体的な役割の例は、以下のとおりです。


・加工装置で「ワークをクランプ→加工→排出」を自動で行うシーケンス

・ロボットアームの動作速度・停止位置・加減速制御

・温度・圧力・流量などを目標値に保つ制御ロジック

・異常発生時に装置を安全に停止させるインターロックの設計


制御設計では、機械系、電気系、ソフト系の境界領域にある仕事であり、「機械がどう動き、何を測り、どう制御するか」という全体像を理解しながら設計を行います。

制御設計の仕事内容

制御設計の仕事内容

制御設計の仕事内容は多岐にわたります。

機械系の制御設計では、単にプログラムを書くだけでなく、物理的な特性の理解から実装、評価まで、幅広い工程を担います。


要件定義

制御設計の最初のステップは、装置や設備に求められる動きを言語化し、制御として落とし込むことです。

まず、顧客仕様書や上流工程から要求を読み解き、「どのような動作が必要か」「安全面でどのような配慮が必要か」「品質を安定させるには何を測るべきか」などを整理します。包装機であれば、以下のような要件を定めます。

・袋を供給するタイミング

・測定・検査の方式

・異常発生時の停止シーケンス

・生産量に応じた速度制御方法

このように、要件定義では、機械・電気・ソフトの担当者とすり合わせを行いながら設計の前提を固めます。


制御アルゴリズムの設計

要求された動作を実現するために、どのような制御アルゴリズムを採用するか決定する工程です。代表的な制御方式には以下のようなものがあります。


・ON/OFF制御:温度制御などで用いられる最も単純な制御

・PID制御:モータ・温度・位置制御など幅広い用途で利用

・フィードバック制御:センサーで状態を測りながら補正

例えば、搬送装置における「停止位置のズレ」を小さくしたい場合、PID制御のゲインを調整して安定性を高めるといった判断が求められます。

車載システムやロボティクスといった高度な分野では、MATLABやSimulinkなどのツールを活用したモデルベース開発(MBD)が主流です。

ソフト仕様策定・設計

ソフトウェアとして実装するための詳細設計を行います。PLCプログラム・マイコンソフトの入出力仕様、状態遷移、インターフェースなどをまとめ、実装者が迷わずに作業できるよう整理します。

代表的な設計書の形式は以下の通りです。

・フローチャート:動作の流れを図示

・ステートマシン:機械の状態遷移を表現

・UML:複雑な処理やモジュール構造を可視化

例えば、搬送ロボットの場合「待機→加速→搬送→減速→停止」という状態変化を図で示し、どのタイミングでどのセンサーを読み、どのように処理するのかを明確にします。


プログラミング

次に、PLCやマイコンに制御ロジックを実装します。

実際のプログラミング担当者は、社内のソフトウェアエンジニアであるケースもありますが、制御設計者自身が行うこともあります。

よく使われる開発手法は、以下の通りです。

・PLC:ラダー、ST、FBDなど

・マイコン制御:C/C++

・組込み:Linuxなど


PLCであれば「モータ起動→インターロックチェック→安全確認→処理開始」といったシーケンスをプログラムします。

試作・検証・チューニング

制御設計の現場において、最も経験値が蓄積されるフェーズが「実機検証」です。

机上の設計通りに動かないことも多く、センサーの誤差、摩擦、遅れ、振動など、実機固有の問題を解決する重要なフェーズです。

例えば、位置制御で停止位置が毎回ズレてしまう場合、加減速のタイミングやゲインを調整して安定性を高めなければなりません。


量産化対応

量産モデルの立ち上げでは、生産技術部門や工場と連携しながら装置が安定して動作するよう調整を行います。

具体的には、生産ラインでの立ち上げサポートや各工場の設備条件に合わせた微調整、フィードバックなどへの対応です。

さらに、産業ロボットを扱うラインではロボットティーチングの役割も担うこともあります。

ロボットティーチングとは、ロボットの動作軌跡、速度、姿勢を教示し、安全性と生産性を両立する動きを作り込む工程のことです。

量産ラインでは、衝突しない動作などを考慮しながら、ロボットの動作を最適化します。

制御設計の難しさ・大変さ

制御設計の難しさ・大変さ

制御設計はシステムの根幹を担うだけでなく、現実の物理現象が複雑になることや複数の専門分野と深くかかわるため、責任範囲が広くなります。

そのため、制御設計の難しさは、必要な知識の領域が広いことです。制御理論、電気回路、センサー、アクチュエータ、産業ネットワーク、組込みソフトなど、複数分野を横断して理解しなければなりません。

実機検証の大変さも挙げられます。装置の動作確認や生産ラインでの立ち会いは、稼働スケジュールに合わせて行う必要があります。

そのため、夜間や休日に作業が発生することもあります。

また、設備トラブルの発生時は、迅速な復旧が求められるため、強いプレッシャーを感じるかもしれません。


さらに、机上では正しくても、実機では想定通りに動かないこともあります。

機構のバラツキ、摩擦、温度変化、センサーの個体差など、理論だけでは説明できない現象に対応する能力が必要です。


ただし、自動車、半導体、FAメーカーなど、規模の大きい企業では体制が整備されており、現場対応が少ないケースもあります。

企業の体制や業界によって、状況は大きく異なるため、一概にハードな職種とは言い切れません。

したがって、転職活動を進める際には、企業ホームページや口コミサイトで情報を集めたり、転職エージェントを通じて確認したりして、企業の実態を把握することが重要です。

制御設計の魅力・やりがい

制御設計の魅力・やりがい

製品動作の要を担うこと

制御設計は、装置やロボットが「狙い通りに・安全に・効率良く」動くかどうかを左右する中心的な役割を担います。

その製品が、何をするために作られたのかという目的を達成するために欠かせない仕事です。


モノづくりに直結する達成感

制御設計の多くは、試作から量産立ち上げまで関与できるため、自分が担当した制御がそのまま製品や装置の動作に反映されます。

自分の組んだロジックで装置が初めて動く瞬間や、チューニングを重ねて狙いどおりの性能が出た瞬間の達成感が、やりがいへとつながります。


専門スキルが資産になる

制御設計におけるPLC、制御理論、FAネットワークに関するスキルは、工場の自動化(FA)が進む現代において、必須となる技術です。

どれほどAIやIT技術が進化しても、物理的な機械を安全かつ確実に動かすには、これらの技術が不可欠です。


制御設計の年収

制御設計の年収は、企業規模、扱う装置の難易度、役職、業界などによって大きく変わります。

求人ボックス」では制御設計の平均年収の目安は以下のようになっています。

・平均年収:約450万〜650万円

・若手(20代):350万〜500万円前後

・中堅(30〜40代):500万〜750万円前後

・管理職クラス:700万〜900万円以上も可能

また上記のほか、設備開発の制御設計者に限定した場合、大手企業では第二新卒でも年収500万円からスタートし、40代になると1000万円以上になるケースもあります。中小企業では、400万円から900万円程度が一般的な傾向となります。

これらの年収の差は、主に以下のような要素によって決まります。


・業界:自動車、半導体製造装置、重工、産業ロボットメーカーは年収が高い傾向がある

・役職:主任・リーダー・主査などに昇格すると給与が上がりやすい

・扱う装置の規模・難度:大型設備・高精度制御を扱う企業は好待遇のケースが多い

なお、海外拠点と連携するような制御設計では、英語力を強みに年収を伸ばせる可能性があります。

制御設計の将来性

制御設計の将来性

制御設計は、工場自動化の中心を担うため、今後も長期的に需要が続くと考えられます。

その背景には、製造業全体で加速する自動化、省人化、DXなどがあります。

近年では、製造ライン、物流、食品工場、医療現場などにおいて、人手不足に悩む声が少なくありません。

これらの分野では、工場の自動化やロボット化が積極的に進められており、制御技術が必要とされています。

さらに、「制御×通信×ソフト」の融合が進み、分野を横断するスキルを持つエンジニアの需要が高まっているため、将来性の高い職業と言えます。

制御設計に向いている人の特徴

制御設計に向いている人の特徴

制御設計は、複雑な物理現象をロジックで表現し、実機と理論のズレを解消するチューニング作業に向き合う根気強さが求められます。

さらに、他部門と円滑にコミュニケーションを取れる能力も必要です。


機械・電気・動作原理への興味が強い人

まず挙げられるのは、「機械がなぜそう動くのか」「どう制御することで安定するのか」に興味を持てる人です。

モータの原理やセンサーの動作、機構の動きといった仕組みに強い関心がある人に向いています。


仮説検証が地道にできる人

制御設計は、実機検証の中で「仮説→検証→修正」のサイクルを何度も回します。

不具合の原因が複数ある場合も多いため、現象をひとつずつ解決していく根気強さが必要です。

丁寧に検証してデータを取り、原因を絞り込む作業が苦にならない人に向いています。

論理的に物事を組み立てられる人

制御設計では、状態遷移やシーケンス、安全インターロックを抜け漏れなく設計しなければなりません。

複雑なロジックを体系的に整理できる人は、制御設計として活躍できます。


チームで協力して調整できる人

制御設計は単独で完結する仕事ではありません。

機械設計、電気設計、組込みソフト、生産技術、品質保証など、数多くの部門と連携しながら業務を進めていきます。

仕様調整のために他者と関わることが苦にならない人は、制御設計の仕事に向いています。

制御設計に必要なスキル・知識

制御設計に必要なスキル・知識

制御設計は、プログラミングスキル、制御理論によるロジック構築力など、幅広い専門性が要求される職種です。


制御理論・電気電子・メカトロニクスに関する知識

制御設計を行う上で、基盤となる理論とハードウェアの理解は欠かせません。

例えばモータが思った速度で回らない場合、制御のパラメータだけでなく、配線の電圧降下や負荷トルクの問題が原因となるケースもあります。

業務を遂行するためには、多角的な知識が必要です。


組込みソフト・PLCのプログラミングの知識

制御設計と密接に関わっているのがプログラミングです。

製造業の制御では、PLCを用いるのが一般的です。

制御の仕様書を作る立場であっても、プログラミングの構造を理解しておくことで設計の質が大きく向上します。

センシング・通信の理解

近年の設備はネットワーク化が進んでいます。そのため、通信規格の知識も求められます。

例えば、搬送装置で位置決めを行う際には、エンコーダの分解能や応答速度を理解し、制御ロジックに反映させる能力が必要です。


回路や仕様書を読み解く力

制御設計者は、電気図面、制御盤図、機械図面、仕様書など、多数の資料を参照しながら設計を進めます。

そのため、制御設計の実務に直結する要素として、必要な情報を正確に読み取る力が求められます。


課題発見・問題解決力

設備の現場では、生産性、品質、安全など、常に何らかの課題や改善要求が発生します。

課題を踏まえ、「どの制御を変えるべきか」「どのパラメータを見直すべきか」を考える力が必要です。


調整・コミュニケーション力

制御設計が担当する領域は機械、電気、ソフトの境界にあるため、他部門との調整業務は避けて通れません。

関係者の意見を整理し、矛盾なく仕様に反映できるよう、綿密なコミュニケーションをとる必要があります。

制御設計に役立つ資格

制御設計に役立つ資格

制御設計は実務スキルが重視される職種ですが、資格の取得は基礎知識の証明として有効です。制御設計の関連資格を以下に紹介します。


情報処理技術者試験

IPAが実施する国家試験であり、IT・ソフトウェアに関する知識を評価する資格です。

プログラム構造や仕様書作成の基本を体系的に学べるため、組込みソフトと関わる制御設計者にとって有益です。


電気主任技術者

電気設備の保守・管理を行える国家資格であり、1〜3種があります。

特に設備規模が大きい企業では評価される傾向があり、制御盤、電気回路、インバータなどを扱う制御設計にとって、電気の基礎力を証明できる資格です。


CAD利用技術者試験

CADを扱う能力を測る民間資格です。

制御設計者はCADを日常的に使うわけではありませんが、図面の読み取り能力が向上するため、特に若手制御設計者におすすめです。

制御盤図や電気図面の確認・軽微な修正に役立ちます。


電気製図技能士(技能検定)

電気製図に関する技能を評価する国家資格です。

配線図、結線図、電気制御図など、制御に関係する図面作成の能力を証明できます。


機械設計技術者

日本機械設計工業会が実施する資格であり、機械設計の知識を評価します。

「機械をどう動かすか」を考える際に、根本の構造理解が深まります。

制御設計に関するよくある質問(Q&A)

制御設計に関するよくある質問(Q&A)

制御設計に興味を持った方が抱きやすい疑問について、まとめて回答します。


制御設計と組込みソフトの違いは?

制御設計の仕事では、機械の動作仕様・制御ロジック・安全条件など、「機械をどう動かすか」を決めます。

一方で組込みソフトは、制御設計で決めた仕様を、マイコンなどのソフトウェアとして実装する仕事です。

実際の現場では、同じ担当者が両方を担うケースも多く、境界が曖昧なこともあります。

CADスキルは必要?

必須ではありませんが、電気図や制御盤図を確認する機会は多いため、あると便利です。

簡単な修正作業を行えるだけでも、コミュニケーションがスムーズになります。

制御設計と電気設計の違いはなんですか?

電気設計は、配線、電気回路、保護装置、電源など「電気的な仕組み(体)」を設計する分野です。

制御設計は、その機械をどう動かすかという「頭脳(論理)」を設計する領域です。両者は密接に関わりますが、役割は異なります。


機械設計と制御設計の違いはなんですか?

機械設計は、力学、材料、機構、フレーム構造など「モノの形・構造」を設計する分野です。

一方で制御設計は、モータ、センサー、ロジックなど「その機械をどう動かすか」を設計する領域です。


制御設計エンジニアの転職成功事例

制御設計エンジニアの転職成功事例

【転職成功事例】

<中小装置メーカーの制御設計から、大手FA装置メーカーの制御設計へ>

31歳・現年収450万円620万円へ年収アップ

中小企業の装置メーカーで制御設計を担当されていた方です。

FA装置を扱う大手メーカーの制御設計ポジションへ約170万円の年収アップで転職されました。

 

<中小装置メーカーの制御設計から、大手メーカーの電気系生産技術へ>

34歳・現年収560万円 780万円へ年収アップ

制御設計として中小装置メーカーで数年間経験を積まれていた方です。

大手メーカーの電気系生産技術職として約220万円の年収アップで転職されました。

エージェントからのアドバイス

エージェントからのアドバイス

現在、制御設計の採用市場は非常に活発です。

半導体装置業界、自動車業界、電子部品業界、航空・防衛業界などでは設備投資が増えており、その影響で制御系エンジニアの人材不足が顕著になっています。

特に、PLC設計そのもののスキルは従来通り重視されつつ、近年は「装置単体の制御」だけでなく、「ライン全体のシステムを理解しているか」が評価基準としてより強く求められるケーズが増加しています。

 

採用が決まりやすい方の共通点としては、自社装置だけを最適化するのではなく、装置の使われ方やライン全体のつながりを意識できる点が挙げられます。

ユーザー視点を持ち、工程やシステム全体を想定した制御設計ができる方は高く評価されています。

また、設備トラブルを未然に防ぐ「予防」の概念が強くなっており、センシング技術を用いて状態を把握するアプローチが重要視されています。


他業界からの転職も増えています。

特に高速搬送技術、精密な駆動が発生する装置の制御、量産品の製造設備の制御経験をお持ちの方は、業界を問わず引く手あまたの状況です。

選考がスムーズに進むケースも多いため、キャリアチェンジを考える方にも追い風の環境といえます。 

面接では、IoT化やエラーの見える化(センシング)、高速制御・精密制御といった設備の見える化・繊細さを実現する技術が注目されており、これらの経験や工夫を具体的に伝えられるかが鍵になります。

今後のキャリアを考える上では、MESシステムやSCADAとの連動、クラウド化、工程の見える化(センシング技術)、さらには単一装置ではなく連動する装置としてのシステム化への経験を深めておくことが、市場価値を高める近道です。ユーザーの要望としては予防保全やクラウド化が強まっているため、最先端技術に興味を持ち、現行装置にどのような追加機能を付与できるか考えられる姿勢が求められています。

 

また、一口に設備制御と言っても、IoT化、スマートファクトリー化、クラウド化、予防保全、センシングによる工程の見える化など、業界のトレンドは様々に広がっています。装置レベルからシステム全体を見渡す力が重要になりつつあり、制御技術に加えて関連分野の知識や経験を積み重ねることが、今後のキャリアを大きく後押しします。加えて、装置開発ではPLCだけでなく高級言語(C言語など)を用いた制御に移行するケースも増えているため、技術の幅を広げる意識もぜひ持っていただきたいポイントです。

この記事の寄稿者

制御設計は、機械、電気、ソフトが交わるものづくりの中枢的なポジションを担う専門職です。

工場の自動化やDXの加速に伴い、その需要は今後も高まると考えられます。

幅広い知識と高度なスキルが求められますが、その分大きな達成感を得られるため、

エンジニアとしての職務経験がある方が転職を考える際、有力な選択肢のひとつとなるはずです。

高見澤希
高見澤希

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